1月のある土曜日の朝、アイルランドの小さな町アスローンにトラクターのエンジン音が響いた。「EUとメルコスールの協定を止めろ」と書かれたプラカードを持つ農家たちが寒空の中に集まり、抗議活動を行った。海峡を渡ったフランスでも、農家たちがボルドー近郊の燃料貯蔵施設を占拠し、ル・アーブル港への交通を妨害しようとしていた。
2026年5月1日、EU・メルコスール暫定貿易協定が正式に発効した。欧州委員会の発表によると、25年以上にわたる交渉を経て、EUと南米のブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイからなるメルコスールが、地球上で最も大きな自由貿易圏の一つを開設した。合計約7億2000万人の市場が対象となり、大西洋をまたぐ貿易総額は推定22兆ドルとされる。
ヨーロッパの輸出業者にとって、変化はすぐに現れる。自動車、ワイン、チーズ、チョコレートなどがメルコスールに低関税で輸出できるようになった。一方、南米からの牛肉、砂糖、大豆などはヨーロッパへの輸入関税が引き下げられる。
農家が最も懸念するのは、9万9000トンという追加輸入枠だ。メルコスールの牛肉がこの枠内で7.5%という低い関税率でEUに入ることができる。アイルランドやフランスの農家たちは、厳しい環境・食品安全基準のもとで生産する欧州の農家が、低コストの南米産牛肉に価格競争で負けてしまうと訴える。
欧州議会は今年1月、この協定を欧州司法裁判所に送り、合法性を審査するよう決議した。裁判所が欧州委員会の権限逸脱と判断した場合、協定の実施が停止される可能性がある。
ブラジルのルーラ大統領は、この協定の発効を歓迎し、「多国間主義と民主主義への信頼の表れだ」と述べた。