韓国南東部の小都市、安東は儒教の伝統と世界遺産に登録された民俗村で知られている。普段はグローバルなエネルギー政策とは縁遠い場所だ。しかし火曜日、その静かな城下町が外交の舞台となった。
韓国の李在明大統領は、日本の高市早苗首相を自分の故郷である安東に招いた。1月には李大統領が高市首相の地元である奈良を訪問しており、今回は高市首相がその答礼として安東を訪れた。長年ライバル関係にある両国の現職指導者が互いの故郷を訪問するのは、これが初めてのことだった。
両首脳を結びつけたのは、中東情勢によるエネルギー市場の混乱だ。李大統領は「中東情勢に起因するエネルギー市場の不安定化が、両国の緊密な協力の必要性を改めて示している」と述べた。
2024年、日本と韓国は世界で第2位と第3位の液化天然ガス輸入国であり、合わせて世界全体のLNG輸入量の4分の1以上を占めている。中東からの供給が揺らぐと、両国は真っ先にその影響を受ける。
安東での会談で、両首脳は原油とLNGの確保に向けた協力の深化、緊急時における燃料の融通や交換を可能にする体制の構築に合意した。また、エネルギー備蓄の強化や重要鉱物の安定供給についても連携を進めることで一致した。
今回の協力は3月に締結された韓国ガス公社とJERAのLNG供給協定を土台としている。また、韓国は高市首相が打ち出した約100億ドル規模の「POWERRアジア」構想への参加も検討している。
エネルギー以外でも、両首脳は米国を加えた三カ国の安全保障協力の強化で合意した。一方、日本が求める軍事物流協定について、韓国国防部は「検討していない」と明言しており、すべての扉が開かれたわけではない。
歴史的な摩擦を抱えながらも、両国は急速に関係を深めている。故郷を訪問し合うという個人的な外交の形が、新しい時代の幕開けを象徴していた。