無線が切れた瞬間、マスタングはもう動いていた。 廊下で二人の部下を押しのけて、走り出した。
「これが最初からマスタングの計画だったんだ」とリンは言いました。 ホテルの部屋の壁にもたれて腕を組み、何でも知っているという顔をしていました。 「バリーが名前のリストを渡した。第5研究所に関わっていた全員の。マスタングは今夜を使って、奴らをおびき出したんだ。」 アルフォンスはベッドの端から立ち上がった。「じゃあ、俺も行く。」 ウィンリーが窓から振り向きました。「アル——」 「ヒューズさんはこれが原因で死んだ。あの研究所に関わっていた誰かが殺したんだ。」アルの声は落ち着いていた。「何があったのか知りたい。なぜなのかを知りたい。」ウィンリーを見た。「必ず帰る。約束する。」 彼女は反論しませんでした。信じて待つしかない約束があることを、もう知っていたので。
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ホークアイはグラトニーに十一発撃ち込んで、それでは解決できないとわかってしまった。 グラトニーは階段のドアのところに立って、彼女が弾を込め直すのを見ていた。 撃った穴は見ている間に閉じていった。 肉が元に戻り、傷があったことさえわからなくなった。 グラトニーは笑った。人間の顔に浮かべていい表情じゃなかった。 もう一度撃った。胴体、頭、また胴体。グラトニーは歩いてきた。 手が伸びてきたとき、ブラック・ハヤテが左から飛びかかった。 十一キロの犬がホムンクルスの脚にぶつかって、思い切り嚙みついた。 グラトニーは少し興味なさそうに見下ろした。その隙で十分だった。 フュリーが後ろのドアに現れた。顔は真っ白で汗をかいていて、もう一丁の銃を持っていた。 撃った。ホークアイは引き離して距離を取った。グラトニーは新しい脅威の方を向いた。 ホークアイとフュリーは持っている全弾を撃ち込んだ。弾の量に押されてグラトニーが倒れた。死んではいないが、倒れた。 そのとき、東の壁が内側に向かって爆発した。 ロイ・マスタングが煙と燃えた壁の破片の中から穴を通って入ってきた。 右手はまだ上げたままだった。 グラトニーの体は向こうの壁に叩き込まれていた。 「間に合った。」マスタングは手を下ろして、ホークアイを見た。顔の緊張が少し解けた。「無事か?」 ホークアイは使った弾倉を抜いて、新しいのを入れた。「敵に顔を見せてしまいましたね、大佐。」 「どういたしまして。」 「批判しています。」 「わかっている。」マスタングはグラトニーの倒れた姿を見た。「死んだか?」 「わかりません。」 二人は確かめるのを待たずに動いた。
ハボックは建物の外で車が来るのを待っていました。 タバコを落として、車が止まる前に乗り込んだ。 三十秒ほど走ったとき、マスタングが急ブレーキをかけた。 道の真ん中にアルフォンスが立っていたので。 「乗れ」とマスタングは言った。 アルは乗った。 ホークアイは窓の外の街を見ていました。「塔の中にいた奴ですが」と言いました。「心臓を撃ち抜きました。頭も撃ちました。それでも来たんです。」 「ホムンクルス」と後部座席からアルフォンスが言った。 マスタングはミラーで彼を見た。「そんなものは存在しない。」 「会ったことがあります。グリードという名前でした。体の中に賢者の石があるんです。それが再生に使われます。銃で殺すことはできません。石がダメージを修復してしまうので。」アルは少し止まった。「どうすれば止められるかは、わかりません。」 マスタングはしばらく黙っていた。「つまり、俺たちは殺せない相手と戦えということか。」 「今夜見た限りでは、そういうことです」とホークアイが言いました。 後ろの暗闇の中で、グラトニーがゆっくりと立ち上がった。傷はもう消えていた。
バリーの足取りは低いコンクリートの建物で終わった。 中央錬金術研究所第3号だった。 門の上の看板に明かりがついていました。
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マスタングは建物をしばらく見た。 「この研究所が関わっているとなれば、中央司令部が直接関係していることになる。必要な証拠は手に入った。」 車をバックに入れた。 「引き上げる。」
バリー・ザ・チョッパーはもう正面ドアから入ってしまっていた。
マスタングはドアが閉まるのを見た。 ギアを戻してエンジンを止めた。
「計画変更だ」と言った。
正面入口に向かい、両手を見せて階級章を前にして、逃亡者を追って施設に入ったと夜勤の兵士に告げた。 夜勤の兵士は門を開けた。
二人一組で建物の中を進みました。 マスタングとハボックが前、ホークアイとアルフォンスが後ろ。 研究所の下の階は上の階より古かった。 むき出しのコンクリート、何年も使われていない機器、封じられたまま忘れられた部屋があった。 地下に降りたところで、二つの組が分かれた。
マスタングとハボックは左の廊下へ。
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廊下の突き当たりの部屋は広くて冷たかった。 石のテーブル。 空の標本ビン。 実験がおこなわれ、そっと中止されたような場所だった。
ラストが待っていた。
「ジャン」と彼女は言い、その声には本物の失望が混じっていました。 「あなたは役に立っていた。物事の仕組みをわかっていると思っていたのに。」
ハボックの手がカービン銃に動いた。 マスタングは彼女の胸の刺青を見た。 己の尾を食う蛇の印。 ここ数ヶ月のことが、頭の中でつながった。
「ヒューズ」とマスタングは言った。
ラストは眉を上げた。
「マース・ヒューズ。あなたが殺したのか?」
ラストは少し考えた。 「止めを刺したのは私じゃないけど。でもいたわよ。」 後悔のない言い方だった。 自分が仕切っていない会議に出席していただけというような言い方だった。
マスタングは脚を撃った。
ラストは下を見た。 傷が閉じた。
また顔を上げて、面白がるような、憐れむような表情を見せた。 「それくらいでは膝はつかせられないわよ、大佐。」
「今はわかっている。」銃を下げずにいた。 「下がれ。」
その代わりに、ラストは爪で自分の胸を開いた。 カーテンを開けるみたいに。 中には骨も血もなく、暗い赤い石が薄い光を放っていた。 マスタングに見せた。 意味がわかるように見せた。 彼がこの部屋から出られないと決めたから見せたのだということも、わかってしまった。
マスタングはすぐに錬成を始めた。 ラストの指が天井を走る水道管に突き刺さった。 パイプが裂けた。 水が壁のような音と勢いで降ってきて、全てを濡らした。 手袋の電荷が消えた。 炎の錬金術が使えなくなってしまった。
ハボックの腕をつかんだ。 走った。
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廊下で、襟から水を滴らせながら、マスタングは壁に背をつけて考えた。
水素と酸素。 水はその両方でできている。 錬成陣は化合物を分解できる。 ただ燃やすだけじゃなく。
ハボックを見た。 「ライターをくれ。」
ハボックは何も聞かずに渡した。 マスタングは部屋の空気を錬成した。 床に残った水も、空気中の水蒸気も、水素と酸素に分けて、室内をライターが届く状態にした。
ドアの隙間からライターを滑り込ませた。
爆発で壁が基礎から持ち上がった。
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二人は中に戻った。
部屋は黒く熱かった。 床にも倒れたテーブルにも灰があった。 マスタングは目を動かし続けながら、何か固体のものを探した。
「再生に気をつけろ」と言った。
ラストの指が瓦礫の下から伸びてきて、ハボックの腹を貫いた。
ジャンは声もなく倒れた。 叫んでいたほうがまだよかった。 ただ折れて、両手を腹に当てて、背中を壁につけてそのまま座り込んだ。 壁に暗い跡が残った。
マスタングがかがみ込んだ。 「ハボック。ジャン。俺を見ろ。」
ハボックは見た。 顔がもう灰色になっていた。
ラストが灰の中から立ち上がった。 体は完璧に再生していた。 ドレスも焼けていなかった。 急がないで、マスタングが部下のそばに屈んでいるのを見ていた。
マスタングは立ち上がってハボックのカービン銃を拾った。 ラストの胸を一発撃ち抜いて、止める前に手を突っ込んで賢者の石を引き抜いた。
ラストはよろめいた。 石がなければ体を保てない。 膝をついた。 床に倒れた。 灰になった。
マスタングは振り返ってハボックのそばにひざまずいた。 石を傷に当てると、効いているのがわかった。 肉が縫われ、血が止まりそうになって——
灰が動いた。
体が床から再び形になった。 手がマスタングの持っている石の周りにつかみ込んできた。 もう一方の手がマスタングの腹を貫いた。
動けなかった。 ハボックを貫いたのと同じ刃で、その場に固定されてしまった。
ラストは右手の手袋を外した。 破き取るようにして。 それから二人を見た。 壁にもたれた一人と、暗い染みが広がる中でひざまずく一人を。
「もったいないことね」と言った。 「人柱が、ここで死ぬだけなんて。」悲しんではいなかった。 予定が狂ったというような言い方だった。
ラストは廊下の方へ歩いていった。
マスタングは言った。 「俺より先に死ぬな、ハボック。」
声は落ち着いていた。
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フューラー・ブラッドレーは護衛なしで研究所の門に現れました。 ドアの前の兵士に、一人で入ると告げた。 兵士は脇に寄った。
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ホークアイとアルフォンスが廊下の突き当たりで見つけた部屋は広大だった。 白い石、高い天井、そして奥に、見つめ返してくるような人物が彫られた巨大な扉があった。 部屋は建物の他の場所とは違う古さを持っていた。
バリー・ザ・チョッパーが部屋の真ん中にいた。
そして床には、人間の体が、バラバラになって横たわっていた。 いや、人間だったものが。 暴力によってではなく、長年の不自然な延命によって腐敗した残骸だった。 肉体は完全に崩れかけていた。 バリーはしばらくその前に立って、何も言わなかった。
「俺だ」と彼は言った。 「これが昔の俺だ。見てみろ。」
ホークアイもアルも何も言わなかった。
「見たかった。もしかしたら取り戻せるかもしれないと思ってた。でも、もうダメだ。動かし続けたものが、もたなかったんだろうな。」悪い投資を見る男のような言い方だった。 「魂は、属さない体には居続けられないんだ。いつかは拒絶してしまう。」
アルは何も言わなかった。 でも心の中で計算していた。 自分の魂が鎧を拒絶するまで、あとどのくらいあるのかを。 四年間いた金属の体が、同じことになるまで、あとどのくらいかを。
「まあ」とバリーは言った。 「これで終わりだな。」
ラストが奥のドアから入ってきた。
バリーを見て、怒りに似た、でも怒りより静かで冷たいものを顔に浮かべた。 「ここまで連れてきたのね」と言った。 「全てが終わった後で。」
「俺が選んだんだ」とバリーは言った。 もう動いていた。 鉈を上げて、鎧の体で出せる全ての勢いで飛びかかった。
ラストは四秒でバラバラにしてしまった。 部品が床に落ちて、動かなくなった。
ラストはホークアイとアルフォンスを見た。
「一夜に人柱が二人」と言った。 「面倒なことね。」ホークアイの方を向いた。 「大佐のそばに送ってあげる。」
ホークアイはラストが入ってきた瞬間から動いていました。 三丁の拳銃を全部使った。 弾倉が空になるたびに落として、移動し続けた。 でも、もうわかっていた。 グラトニーにあれだけ撃ち続けた。 傷が閉じていく様子を知っていた。
最後の銃が空になるまで撃ち続けた。
そのとき、ラストが「大佐のそばに」と言った意味がわかってしまって、膝が床についた。 立ち上がろうとしても、できなかった。 ロイ。ラストはロイのそばに、と言った。 それはつまり、ロイが——
ラストが彼女をまたいで進もうとした。
アルフォンスが間に立った。
「どいて」とラストが言った。
「嫌だ。」
ラストは鎧を切り裂いた。 アルは弾いて、受けて、前に押した。 一撃ごとに鋼鉄に深い傷が刻まれた。 生きた体だったら終わっていた。 でもアルは動き続けた。
「逃げて」とホークアイが床から言いました。 「アル、私を置いて——」
「嫌だ。」アルは床から錬成した壁を立ち上げて、ホークアイをその後ろに押し込んだ。 「そんなことはできない。」
ニーナのことを思っていた。 ヒューズさんのことを思っていた。 マルテルのことを思っていた。 自分の体の中で、自分を信じて死んでいったマルテルのことを。 両腕を広げて、ラストと壁の間に鎧の体を置いて、その場を守った。
「仲間を死なせたりしない」と言った。 「誰も死なせない。」
入口から声がした。 「いい答えだ。」
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ロイ・マスタングがドアのところに立っていた。
右手に手袋はなかった。 その手の甲に錬成陣が切り刻まれていた。 荒削りだが正確な、非常に悪い状況でとても冷静に考えた人の仕事のような線だった。 左手に火打ち石を持っていた。 腹は血で黒くなっていたが、そのことを気にしている様子はなかった。
アルフォンスを見た。 「中尉と一緒に壁の後ろに入れ。厚くしろ。」
アルはもう動いていた。
マスタングは右手を上げた。
出てきた炎は、普段のものとは違った。 優雅さはなかった。 ただ量と熱と繰り返しだった。 波が次々とラストに叩きつけられた。 ラストは叫びながら突進して、燃えて、また来て、また燃えた。 立ち上がるたびに次の波が来た。 完全に再生させなかった。
ラストは指を立てて、もう言葉にならない声を上げながら向かってきた。
「一発で足りないなら」とマスタングは言った。 声は遠くて平らになっていた。 「足りるまで撃ち続けるだけだ。」
ラストの賢者の石が尽きた。
ただ切れた。 体を何度も再生するうちに使い切ってしまったので、突進の途中で止まった。 体が段階的に崩れていった。 立ったまま灰が落ちて、端から光が消えていった。
ラストはマスタングを見た。
「たいした集中力ね」と言った。 声が形を失っていた。 「あの澄んだ目も、いずれ曇るでしょうね。」 少し間があった。 「絶望で。」
それから消えた。 床に灰と、空気の熱だけが残った。
マスタングの脚が力を失った。 ゆっくりと、片膝、もう片膝と落ちて、ドアの枠に背をもたせかけた。
「アルフォンス」と言った。 「中尉を守ってくれてありがとう。」 少し目を閉じた。 「救急車を呼んでくれ。ハボックと俺のために。」
玄関ホールで、フューラー・ブラッドレーが影の中から見ていました。 剣は抜かれていた。 マスタングが倒れたドアの方を見た。 床の灰を見た。
剣を収めて、歩き去った。
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ウィンリーはホテルの前の段に一時間座って待っていました。 砂利の上に足音が聞こえたとき、立ち上がった。
アルフォンスが角を曲がってきた。 鎧には深い傷が縦横についていた。 右腕はかろうじてつながっているだけだった。 全ての関節がまだ決まっていない問いのように動いていた。
ウィンリーは近寄って、両手をアルの兜の両側に当てた。 顔に触れる一番近い方法として。
「戻ってきた」と言いました。 二語目で声が完全に割れた。
「約束したから」とアルは言った。
右腕が落ちた。
ウィンリーは地面に当たる前に受け止めて、笑いながら泣きながら、腕とアル両方をつかんでいた。
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広い白い部屋で、バリー・ザ・チョッパーの部品はまだ動かなかった。 でも血の紋——魂を鎧につなぎとめる封印の紋——は無事だった。 どこかで、まだ生きていた。 動けず、話せないまま。
バリーの人間の体が、片腕で床を引きずりながら動いていった。 長い時間がかかった。 封印の紋のところに着くと、片手を上げて、紋を引っ掻いて消した。
二つとも静かになった。
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エドワード・エルリックはリゼンブールに午後の列車で帰ってきた。
ブレダとアームストロング少佐がホームで待っていました。 別れを言ったのは駅の入口だった。 アームストロングは握手が抱擁になった。 エドは文句を声に出さずに耐えた。 ブレダはさりげなく手を振った。 見た目より意味のある別れだった。
エドはピナコの家への道を一人で歩いた。 畑は昔と同じだった。 道はちゃんと覚えていた長さだった。
最後の曲がり角を曲がったところで止まった。
母の墓の前に男が立っていた。
背が高く、肩幅が広く、急いでいない様子だった。 両手を体の横に垂らして、墓石を見ていた。 しばらくそこに立っていて、もっと立っていられるという立ち方だった。
エドワード・エルリックは、何年かぶりに父親の後頭部を見た。
ヴァン・ホーエンハイムが振り返った。