マイキーは拳の中にお守りを握りしめたまま、立っていました。 記憶が少しずつ戻ってきた。
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二年前、花垣武道は一人でブラックドラゴンズと戦っていました。 マイキーはそれを知って、そのままにしておくことはできないと思った。 でも、ただ喧嘩をするためだけに動くのは違う。 意味のある理由が必要だった。 その理由をくれたのは場地だった。
「俺たちで自分たちの組を作ろう」と場地は言った。
それだけだった。 場地はいつもそうやって、難しいことを簡単にしてしまう。
二人が考えていたのは、仲間のためなら命を懸けられる組だった。 それだけでよかった。 それが全てだった。
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2003年6月13日。 マイキーは全員を神社に集めた。
その日、マイキーは場地のバイクの後ろに乗っていた。 丘の下の交差点で赤信号になったので、二人は止まった。 場地はハンドルを叩いた。
「東京で一番いいバイクだ」と場地は言った。
左から龍宮寺が並んできた。「違う」
後ろから三ツ谷も来た。「絶対に違う」
最後にパーちんが来て、みんなの間に割り込んで、一人一人を見てから言った。「俺のが一番だ」。そして信号が青になった瞬間、もう走り出していた。肩越しに声が聞こえた。「神社まで競争だ。最後は負け犬だぞ」
全員が後を追った。場地以外は全員。
場地は後ろを振り返った。マイキーが自分の肩の上で寝てしまっていた。
場地はスピードを落とした。 最後まで丁寧に走って、最後に到着した。 そして、マイキーを背負って神社の階段を上った。
マイキーが目を覚ました時、みんなはもう円になって座って待っていました。
「ブラックドラゴンズのことは聞いたか」とマイキーは言いました。まるで今まで寝ていなかったかのように。
三ツ谷が頷いた。「やばい組だ。俺たちより平均三歳は上だ」
マイキーは花垣を見た。「なんで一人で戦ってたんだ。言ってくれれば良かったのに」
「あいつらのテリトリーに住んでるんだよ」とパーちんが言った。
花垣は何も言わなかった。
「あいつらに勝負を仕掛けよう」とマイキーは言いました。
「でかい組だぞ」と龍宮寺が言った。
「だったら俺たちがもっとでかくなればいい」。場地は前に乗り出した。「俺たちで組を作る」
誰も反対しなかった。 場地はずっと考えていたかのように、組の構造を話し始めた。 マイキーが総長、龍宮寺が副総長。三ツ谷が特攻隊長、パーちんが旗持ち。場地と花垣が突撃隊だ。
マイキーは少し考えてから言った。「名前は決まった。東京卍仁義組だ」
静かになった。
「最悪だ」と龍宮寺が言った。
「本当にひどい」と三ツ谷も同意した。
でも全員が賛成した。
「どんな組にしたいか」とマイキーは聞きました。
場地はすぐに答えた。「仲間のために命を懸けられる組だ」
パーちんが膝を叩いた。「だったら、お守りが必要だ。この日を刻むために」
全員で神社の売店に行って、交通安全のお守りを見た。 一つ五百円だった。 みんなでポケットを確認した。もう一度確認した。全員合わせても五百円には届かなかった。
「出し合おう」と龍宮寺が言った。
全員が持っているものを地面に出して、二回数えた。なんとか一つだけ買えた。
マイキーは場地にお守りを差し出した。「お前が持っておけ。これはお前のアイデアだったんだから」
場地は何も言わずに受け取った。値段以上のものを持つように、大切に持った。その時にはもう、本当にそれだけの価値があったから。
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今、神社に立っているマイキーは、その同じお守りを拳の中で強く握った。 全部思い出した。 東卍を作ったのは場地だったと、改めてわかった。 計画や演説があったわけじゃない。 組とはどうあるべきかについての、たった一言だった。 そして場地はその後、毎日それを本当のものにしようとしていた。
警察のサイレンが静寂を切り裂いた。
全員が一度に動いた。 行かなければならなかった。
花垣だけが、その場に残った。
「行け」と花垣はみんなに言った。 「俺は残る。俺のせいだ。俺が向き合う」
東卍の仲間たちが動き始めた。 マイキーは止まった。
花垣はマイキーを見た。 「許してくれとは言えない」。 声は平らで、落ち着いていた。 何かを決めて、もう戻らないと決めた人の声だった。 「でも、これは一生背負っていく」。 花垣は頭を地面に近くなるまで下げた。
マイキーは長い間、花垣を見ていた。 それから振り向いて、歩き去った。
戦いは終わった。 東卍が勝った。 サイレンが止まる前に、花垣は逮捕されてしまった。
後に、人々はこの夜を「血のハロウィン」と呼ぶようになった。
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二週間後、千冬はヤキソバの容器を持って墓の前に立っていました。
半分を墓石の前に置いた。
「持ってくるって言ったろ」と千冬は言った。
地面に座って、自分の半分を食べた。 しばらく、他には何も言わなかった。
初めて場地景介に会った時のことを思い出した。 千冬は十二歳で、新しい学校の一年目だった。 上の学年から喧嘩を売ってきたやつらは全員倒していた。 仲間が教えてくれた。 まだ知っておくべき人が一人いると。 一年生だけど留年していて、年上で、もしかしたら手強いかもしれないと。
千冬は探しに行った。
見つけたのは、眼鏡をかけてきれいに髪をとかした男子が、一人でノートに向かって同じ字を何度も書いている姿だった。
ほとんど帰りそうになった。
でも代わりに、ノートを覗き込んだ。 「それ、違う」
場地は顔を上げた。
「虎の字だ。書き方が違う」。 千冬は指さした。 「それより、なんでそんな格好してるんだ」
「また失敗したら、母ちゃんが泣くんだ」と場地は言った。 恥ずかしそうにするのではなく、ただ普通に言った。 「そうはさせられない」
千冬は正しい書き順を教えた。 場地は注意深く見てから、自分で書いてみた。 顔を上げて言った。 「お前、意外とまともな人間だな」。 驚いているようだった。
気がついたら、建物が空になるまで二人で話していた。
帰り道に、三人の年上の男が千冬の前に出てきた。 前に千冬が倒した先輩と、マンダラという組の仲間たちだった。 先頭には組長がいた。
千冬は挨拶代わりに頭突きをした。
「ただ挨拶しただけだ」と千冬は言った。 組長がよろめいた。 「これは恥ずかしいだろ、一人にこれだけの人数で来るなんて」
しばらくは一人で戦えた。 でもだんだん数が多すぎてしまった。
場地が現れた。
まだペンを持っていた。 マンダラの組長を見て言った。 「一人にこんなやり方で向かっていくなんてかっこ悪い」。 それから千冬をちらっと見た。 「さっきは助かった。手紙、書き終えたぞ」
組長を一発殴った。 組長は倒れて、起き上がれなかった。
場地は残りの全員を一分もかからずに倒してしまった。 終わってから、まだ立っている者たちに向かって言った。 「もしまた俺の仲間に手を出したら、お前たちの組を全部潰す」。 それは本気で言っていて、絶対に忘れないという言い方だった。
それから千冬を見た。 「ヤキソバは好きか」
千冬は目を見張った。 「は?」
「ヤキソバ。好きか」
「好きだ」と千冬は言った。
「来いよ」
二人は場地のアパートへ歩いた。 千冬は気がついた。 同じ建物に住んでいたのに、違う階だったので、一度も話したことがなかったのだ。 場地は台所に行って、ヤキソバの容器を一つ持って帰ってきた。
一つだけ。
何も言わずに真ん中で分けて、千冬に半分を渡した。
千冬は食べた。 この人のためならどこへでも着いていくと、その時に決めてしまった。
今、千冬は墓を見た。 墓石の前に置いた半分の容器を見た。
「同じ建物で、違う階だったのに」と千冬は言った。 「お前がいるなんて、全然知らなかった」
もう少し場地のそばに座ってから、千冬は立ち上がって帰った。
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東京少年鑑別所は灰色で、洗剤のような匂いがしていました。 タケミチと龍宮寺は仕切りを挟んで、花垣の向かいに座っていた。
花垣はここでは少し小さく見えた。 負けたというわけじゃない。 戦いがやっと終わった時に人がなるように、縮んだように見えた。
「たぶん十年だ」と花垣は言った。 「それでも足りないかもしれない。わからない」。 テーブルを見た。 「逃げるつもりはない」
「そこで死ぬなよ」と龍宮寺は言った。
花垣が顔を上げた。
「お前が何を考えてるかわかるぞ」と龍宮寺は言った。 「死んだら帳消しになると思ってるんだろ。 そうはならない。 もしやったら、俺は許さない」。 龍宮寺は花垣の目をしっかり見た。 「マイキーから伝言があるんだ」
花垣は待った。
「お前はまだ東卍の仲間だ」と龍宮寺は言った。 「そして、マイキーはお前を許す、と」
花垣の顔はしばらく動かなかった。 それから、何かが変わった。 安心とは少し違う。 でも、何年かかかって、静かな時間が積み重なれば、安心になれるかもしれないものが、そこにあった。
何も言えなかった。 言えるものが何もなかったから。
タケミチは花垣を見ながら、場地のことを考えていました。 お守りのことを考えた。 六人の少年が全部出し合って一つのものを買って、それが互いのために死ねるという意味だと決めた、神社のあの日のことを考えた。
場地はそのために死んだ。 その誓いがまだ本当だと信じて、死んでいった。
タケミチはその誓いを、ずっと本当のままにしておくつもりだった。