本来は血糖値を管理するための薬が、アルコールや麻薬などへの渇望を抑える可能性があるという、驚くべき研究結果が発表された。
2026年3月4日、医学誌「BMJ」に掲載されたこの研究は、2型糖尿病を持つアメリカの退役軍人606,434人を対象に、最長3年間にわたって健康記録を追跡したものだ。対象となったのは、オゼンピックやウゴービといったブランド名で知られるGLP-1薬と呼ばれる薬のクラスである。
研究チームは退役軍人を2つのグループに分けた。依存症の経験がない人たちの中で、GLP-1薬を服用していた人は、新たな依存症を発症するリスクが約14%低かった。アルコールで約18%、コカインで約20%、ニコチンで約20%、オピオイドで約25%、それぞれリスクが減少していた。
さらに印象的だったのは、すでに依存症を抱えていたグループの結果だ。GLP-1薬を服用していた人は、過剰摂取が約39〜40%減少し、依存症に関連した死亡は約半分に減った。救急搬送は約30%、入院は約25%それぞれ減少し、自殺念慮や自殺企図も約25%減ったと報告された。
研究を率いたワシントン大学医学部のジヤード・アル・アリー博士は、「複数の物質にわたる効果の一貫性は、非常に驚くべき発見だった」と語った。
なぜ糖尿病の薬が依存症に効くのか。研究者たちは、GLP-1薬が脳の報酬・渇望回路に作用し、「薬物ノイズ」と呼ばれる強迫的な渇望を抑える可能性があると考えている。
ただし、この研究は観察研究であるため、因果関係を証明するものではない。また、対象者の多くは平均年齢約65歳の白人男性であり、結果がすべての人に当てはまるとは限らない。現在、約33件の臨床試験がGLP-1薬の依存症治療への応用を調査している。