これは、今から二年前のことでした。
その日、六人は新しいジャンパーを着て並んでいました。 マイキー、ドラケン、バジ、三ツ谷、パーちん、一虎。 写真を撮った後、みんなはバイクに乗って神奈川に向かって南へ走った。 総長も一緒に走っていました。 ただし、総長のバイクはボロボロのスクーターだった。 古くて遅くて、とても自慢できないものだったので、マイキーはそれを「ストリートホーク」と呼んでいた。 本当は欲しいCB250Tの名前をつけて、まるで名前が変えればバイクも変わるとでも思っているみたいに。
海に着く前に、地元のバイクチームに囲まれてしまった。 年上の男たちで、トーマンのことなど聞いたことがなかった。 その中の一人がスクーターを見て笑った。 そして、わざと蹴り倒そうとして近づいてきた。
マイキーはその男を見た。
「傷をつけたら、殺す」とマイキーは言った。
天気の話をするみたいな、静かな声だった。 男は動くのをやめた。 マイキーの顔を見ていたら、それがただの脅しではないとわかってしまったのだ。 相手のチームは引いていった。 「次はちゃんとやってやる」と言い残して。
ドラケンはその背中を見送った。 「あのボロスクーターのために、もう少しで喧嘩になるところだったな」 「もう少しでな」とマイキーは言った。
他のみんなは喧嘩になっても構わなかった。 問題は、喧嘩になりかけたのに喧嘩しなかったこと、そしてその原因がマイキーのスクーターだったことだ。 何キロか走る間、みんなはそのことをマイキーに言い続けた。
海に着く前に、スクーターのガスが切れてしまった。 マイキーはゆっくり止まって、ガソリンメーターをじっと見た。 まるでメーターに裏切られたみたいな顔だった。 ドラケンはバイクの前に立って、三秒間何も言わなかった。 それから、遠くに行く前に燃料を確認しないことについて、言いたいことを全部言った。 マイキーはじゃんけんでガソリンスタンドを探しに行く人を決めようと言った。 これはトーマンの問題なので、民主的に決めるべきだ、と。
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バジが負けた。
バジはスクーターに乗って来た道を戻り、他のみんなは海へ向かった。 ドラケンと三ツ谷はすぐに誰が先に水に着くか賭けて、走り出した。 一虎は少し遅れて、マイキーが二人を追いかけるのを見ていた。 いつもは誰よりも前にいるマイキーが、今日は後ろから走っていた。
バジはガソリンスタンドを見つけられなかった。
まだ探していたら、さっきのバイクチームがバジを見つけた。 スクーターをすぐに見分けて、「次の機会」が来たと思ったのだ。
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最初に殴られた。 バジは道に倒れ、また来た。 それからチームのメンバーがスクーターに向かった。 バジはスクーターに覆いかぶさった。
「触るな」とバジは言った。 唇が切れていた。 肋骨が痛かった。 「マイキーのバイクに触ったら、殺す」
また殴られても、バジはスクーターを離さなかった。
そこへ足音がして、マイキーが来た。
海に着いてすぐに、スクーターの荷物入れに水着を入れたままだったことを思い出したのだ。 マイキーはその場の様子を見た。 道に倒れてスクーターを守るバジ。 その上に立っているチームの男たち。
マイキーは自分のスクーターに近づいて、蹴った。
全員が動きを止めた。 チームの男たちも、バジも、驚いて見ていた。
「お前、今自分の……」と一人が言い始めた。
マイキーは男たちの方を向いた。 顔つきが変わっていた。 「俺の大切なものを傷つけるとは、どういうつもりだ」
「自分で蹴っただろ……」
マイキーは動いた。 一発、一人が倒れた。 それからバジの横に立って、手を差し伸べた。 バジの顔を、大切なものを確認するような真剣な目で見た。
「大丈夫か?」
バジはその手をつかんで立った。 唇が切れていても、もう笑っていた。 二人は並んで、残りの男たちの方を向いた。
2003年8月13日。 一虎には計画があった。
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一虎はバジを見つけて、他のみんなから離れた場所へ連れて行った。 二人だけになったら、計画を話した。 マイキーの誕生日が近づいていた。 マイキーはずっとCB250Tが欲しかった。 スクーターじゃない、本物のバイク。 夢のバイクだ。 それをプレゼントしようというのだ。
「盗むんだ」と一虎は言った。
バジの表情が変わった。 「マイキーは盗んだバイクを欲しがらないぞ」
「知らなければいい」
「そういう問題じゃない」
「マイキーはずっと欲しかったバイクを手に入れられるんだ」と一虎は言った。 「それが大事なことだろ。マイキーは喜ぶぞ」
バジはしばらく黙った。 それから、マイキーが本当に喜ぶだろうということ、そして完璧な方法じゃなくても誰かを幸せにすることには意味があるということを考えたら、それ以上反対するのをやめてしまった。
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その夜、二人は行った。
バイクショップは暗くて、鍵がかかっていた。 一虎がチェーンを切って、バジは通りを見張った。 中に入ってCB250Tを見つけたが、近くで見るとそれは新品ではなかった。 カスタムの改造がしてあって、売り物ではなく整備中のバイクのようだった。 でも、もう止まれなかった。 一虎は外からシャッターを開けるために裏へ回り、バジはバイクと一緒に待っていた。
明かりがついた。
奥の部屋から男が出てきた。 男はバジを見て、バジは男を見た。 二人は同時に気がついた。
「バジ?」
「シンイチロウさん」バジの声が小さくなった。 「ここで何を……」
「俺の店だから」とシンイチロウは言った。 脅すのではなく、ただ何が起きているのかを理解しようとしながら、近づいてきた。
バジは一虎がシャッターから入ってくる音を聞いた。 振り返った。 「一虎、止まれ――」
一虎はもう近くの棚から道具を手に取っていた。 素早く近づいて、シンイチロウの後頭部を殴った。 変な音がした。 シンイチロウが倒れた。
「顔を見られるわけにはいかなかった」と一虎は言った。
「それはマイキーの兄貴だ」バジの声はとても静かだった。 「一虎。あれはシンイチロウだ。マイキーのお兄さんだ」
ショップの中が静まり返った。 一虎は床に倒れている男を見下ろした。 その時の一虎の顔には、心の中でやっていることが見えていた。 何とか意味のある形に考えようとしているのに、どう考えても辻褄が合わないのだ。
シンイチロウは動かなかった。 バジはそばにしゃがんで、確かめなければならないことを確かめようとした。 でも、確かめられなかった。
そこへ外からサイレンが聞こえた。 前の窓から青い光が入ってきた。
「逃げないと」とバジは言った。
一虎は動かなかった。 小声で何かを言っていた。 バジは一虎の腕をつかんで、その言葉を聞き取った。
万次郎のためにやったんだ。万次郎のせいだ。万次郎を殺さなければ。
ループのように繰り返していた。 何度も言えば、目の前にある真実とは違う何かになれるとでも思うように。
バジは一虎をドアの方へ引っ張ったが、もう遅かった。
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警察が二人をショップの前から連れ出した。
マイキーがいた。 暗い通りに立っていて、手錠をかけられた二人が出てくるのを見たとき、マイキーはとても静かになった。 言葉が見つからないものを見るような目でバジを見た。
「バジ」マイキーの声はほとんど落ち着いていた。 「何があったんだ」
バジは泣き始めた。 堪えた後の涙ではなかった。 もう何も堪えられなくなったときに出る涙だった。 マイキーから目を離さずに、ごめんと言った。 もう一度言った。 それしか言葉がなかった。
バジの後ろで、一虎はまだ小声で繰り返していた。
万次郎を殺さなければ。万次郎を殺さなければ。