マディソン・スクエア・ガーデンのハーフタイム、スコアボードは残酷な現実を示していた。サンアントニオ・スパーズは76対49でリードしており、前半だけで3ポイントシュートを14本決めるというNBAファイナル新記録を樹立した。会場は静まり返り、第3クォーター終盤にはスパーズが29点差をつけていた。
ファイナル75年の歴史で、そこまでの点差を逆転したチームはなかった。
しかしその夜、ニューヨーク・ニックスがそれを成し遂げた。
6月10日、ニックスはゲーム4でスパーズを107対106で下し、NBAファイナル史上最大の逆転劇を完成させた。従来の記録は2008年にボストン・セルティックスが樹立した24点差での逆転だったが、ニックスはその記録を5点上回った。
逆転の鍵はシンプルな事実にあった。スパーズの得点が止まったのだ。前半に76点を奪ったサンアントニオは、後半わずか30点しか取れず、フィールドゴール成功率は約20パーセントにとどまった。
この試合の主役はOGアヌノビーだった。守備で知られるニックスのフォワードは、この日33点という自身のプレーオフ最高得点を記録した。残り1.2秒、アヌノビーがゴール下でボールをティップインし、107対106と逆転。ガーデンは爆発した。
この勝利でニックスはシリーズを3勝1敗とした。最後にニックスがNBAチャンピオンになったのは1973年のこと。53年間の渇望があと1勝に迫っている。