2023年2月13日、地中海の深海で目に見えない何かが通過した。
シチリア島沖の海中を、一つの素粒子がほぼ水平に進み、海面から約3,450メートル下で原子に衝突した。その衝突は青い光を生み出し、建設途中の検出器がその閃光をとらえた。物理学者たちは後に、この粒子が約35ジュールのエネルギーを持っていたと計算した。これは原子より1兆倍も小さなものに、落ちるリンゴほどの力が詰め込まれていたことになる。
これは史上最もエネルギーが高いニュートリノの観測記録であり、それまでの記録の10倍以上だった。しかし3年以上、その発信源は謎のままだった。
2026年3月に発表された論文が、説得力のある答えを提示した。犯人は一つの天体ではなく、「ブレーザー」と呼ばれる天体の集団だという。ブレーザーとは、相対論的なプラズマジェットをほぼ地球に向けて放射する超大質量ブラックホールである。
研究チームのリーダー、ベンダーマン氏はAM3というソフトウェアを使ってブレーザーの集団をシミュレーションした。その結果、ブレーザーの集団がこの超高エネルギーニュートリノを生み出せることが示された。
この発見は、新しい粒子を必要とせず、既存の天体物理学で説明できる可能性を示している。KM3NeT検出器が完成すれば、さらに多くのデータが得られると期待されている。