2026年5月1日、アメリカ食品医薬品局(FDA)は新しいタイプの乳がん治療薬「ベプデゲストラント」(商品名:ベッパヌ)を承認した。これは「PROTAC」と呼ばれる新しい薬のクラスとして、FDAが初めて承認した薬であり、約20年にわたる研究の末にようやく実現した大きな節目となった。
この薬は、ESR1という遺伝子に変異がある、治療が難しいタイプの進行乳がん患者を対象としている。従来のがん治療薬は、問題のあるタンパク質に結合してその働きを止める方法をとる。しかしベッパヌは全く異なる仕組みで働く。薬の分子には二つの端があり、一方の端がエストロゲン受容体というタンパク質をつかみ、もう一方の端が細胞内のゴミ処理システムを呼び寄せて、そのタンパク質を分解・除去させる。タンパク質を「ブロック」するのではなく、「消滅」させるのだ。
VERITAC-2という第3相試験では624人の患者が参加し、ESR1変異を持つ270人を分析した結果、ベプデゲストラントを投与された患者はがんが悪化するまでの期間が中央値5か月だったのに対し、従来薬フルベストラントでは2.1か月だった。また、がんが縮小した割合も19%対4%と、新薬が大きく上回った。
この薬はアービナスとファイザーが共同開発したもので、アービナスにとって初めて市場に出した薬となる。この技術は将来、乳がん以外のアルツハイマー病や自己免疫疾患にも応用される可能性があると期待されている。