場地は自分の手についた血をしばらく見ていました。 それから腕が落ちて、パイプが地面に当たった。 金属の音が空き地に響いた。
マイキーはそれを見ていた。
もう動き出していた。 場地のほうではなく、半間のほうへ。 半間は何かを準備していたが、それでは足りなかった。 一発の蹴りだけで十分だった。 半間は折れて倒れて、もう起き上がらなかった。 マイキーは一度も振り返らず、彼を踏み越えて進んだ。
目が一虎を捉えていた。
タケミチは空気が変わったのを感じました。 以前、ドラケンから聞いたことがあります。 刑務所の面会室で、ドラケンは平らな声で、その夜に何が起きたかを話してくれました。 まるで記憶から読んでいるような話し方でした。 マイキーの顔。地面にいる一虎。そして次に起きたこと。
今、それが目の前で起きていた。
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場地は完全に崩れて、片手を地面について倒れた。 千冬がすぐそばに来て、タケミチもすぐ後ろに続きました。 場地の上着の前が濃く、濡れていた。 喧嘩だけでは説明できないほどだった。
「稀咲」と千冬は言って、顔を上げた。 「お前が何かしたのか」
稀咲は地面の場地を見ました。 表情は変わらなかった。 「俺は何もしていない」
千冬は口を開けたが、止まった。 傷をもっと注意深く見た。 顔が変わった。
タケミチも同じ瞬間に気がついた。 これは今夜の傷じゃない。 傷はもう前からあって、もうずっと深くなっていたのです。 一虎のナイフ、前に、タケミチが彼を押さえていて、気がついた時にはもう終わっていた。
場地は知っていた。 知っていながらこの戦いに来て、最後まで戦い続けたのだ。
近くで、東卍の隊長の一人が後輩に言いました。 「救急車を呼べ。早く」
稀咲は少しの間、黙っていました。 それから、静かに、ほとんど独り言のように言いました。 なるほど、と。 一虎が場地をここに連れてきた。 ヴァルハラへ、この戦いへ。 もしかしたら最初から、始めたことを終わらせるつもりだったのかもしれない、と。
タケミチはマイキーを見て、稀咲が何をしようとしているのかすぐにわかった。
マイキーはもう立っていました。 半間の体のそばにしゃがんでいたが、今は立ち上がって、目が一虎を見ていた。 その顔は、タケミチには言葉で表せないものでした。 怒りとは少し違った。 怒りよりもっと古いものだった。
「マイキー」とタケミチは言いました。
マイキーには聞こえなかった。 それとも聞こえても、もう関係なかった。
一虎に向かって歩いていった。
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一虎は逃げなかった。 立ち上がって、近づいてくるマイキーを見て、どちらかが死ななければならないと言った。 声は落ち着いていた。 本当にそう信じていた。
マイキーが殴った。
最初の一発で一虎は倒れた。 動けないうちに二発目、三発目が来た。 マイキーは無言で動いていた。 叫ばない、脅さない、ただ力を続けて使うだけだった。 一虎はそれを受け続けて、その顔のどこかに、安堵に近いものがあった。
タケミチは動けずに立っていました。 頭の中でドラケンの声が聞こえていた。 マイキーは一虎を死ぬほど殴った。 そして、その後、すべてが変わってしまった。
何も変えられていない。 止めるために戻ってきたはずの未来が、三メートル先で起きてしまっていた。
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一虎の視界が灰色になってきた。 その中に、記憶が来た。
半間の声。 前に、簡単な口調で言っていた。 場地は敵だ。 場地は東卍を選んだ。 みんなと同じように、お前のことを捨てる。
一虎はそれを信じてしまった。 いつも、自分が一人になる話のほうを信じてしまうから。 タケミチが押さえていた時に、場地が動かずに立っていた時に、背中にナイフを刺した。 そしてそれが必要なことだと言い聞かせた。
もっと前の記憶が来た。 もっとずっと前の。
ガレージ。誕生日。自分の手の中のチェーン。間違った人間の頭に当たった。すべてが戻れない方向に壊れた瞬間。
その後の場地の声。 「そんなこと言うな。殺すなんて言うな。俺はお前と一緒だ。最後まで一緒だ。」
場地はそう言ってくれた。 その言葉を一虎は石のように二年間持ち続けた。 少年院の中でも、毎晩マイキーを憎む理由を作ろうとしていた夜も。 マイキーを憎めば、自分がしたことに意味があることになるから。 ただ意味のない、許されない行為じゃなくなるから。
場地はずっと一緒だった。 ずっと一緒でいてくれた。 なのに自分は、その背中にナイフを刺してしまった。
殴りを防ごうとするのをやめた。 マイキーが終わらせればいい。 それでいい。 どこかで場地に会えたら、ごめんと言える。 それが少しでも意味を持てばいい。
目を閉じた。
その時、場地の声が聞こえた。
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大きくはなかった。 場地にはもう大きな声を出す力はなかった。 でも、すべてを切った。
「マイキー」
マイキーが止まった。 振り返った。
場地は立っていた。 立てるはずじゃなかった。 それでも立っていた。 意志だけで体を支えて、片手を脇腹に当てて、マイキーを見た。 その目には疲れと、優しさと、絶対的な何かがあった。
「ありがとう」と場地は言いました。 「俺のために怒ってくれて」
前に歩いた。 マイキーを通り過ぎて。 地面にひざまずいている一虎の前に止まって、下を見た。
「俺は死なない」と場地は言いました。 「だから心配するな」
その声は、ただ事実を言うような声でした。
それから言いました。「お前の手では死なない」
上着の中からナイフを取り出した。 迷いはなかった。 一晩中ずっと見せてきた、あの落ち着きと同じだった。 五十人を倒した時も、手についた血を見た時も。
ナイフを向きを変えて、自分の脇腹に刺した。
千冬が声を上げて飛び出した。 タケミチももう動いていました。 二人で場地を受け止めて、脚が動かなくなった場地と一緒に地面に下りた。 場地は二人に抱かせた。 その顔は、その瞬間、穏やかだった。
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三人は地面で近くにいました。 千冬が場地の頭と肩を抱えていた。 タケミチは手を握っていた。
場地はタケミチを見た。
「稀咲は」と場地は言いました。「敵だ」
声はとても小さくなっていました。 タケミチは身を寄せた。
「メビウスの後。パーちゃんが長内を刺した時。」少し間があった。「稀咲はマイキーのところに行った。パーちゃんを刑務所から出してやれると言った。その代わり、三番隊隊長にしろと。」また間があった。もっとゆっくりになった。「俺は知ってしまった。自分でどうにかしようとした。でもできなかった。」目はタケミチから離れなかった。「でも俺は自分の手で死ぬ。一虎の手じゃない。だからマイキーが一虎を殺す理由がなくなる。わかるか?」
タケミチは頷きました。 声が出なかった。
「お前は信一朗に似てる」と場地は言いました。 「少しだけ。」何かが顔を過ぎった。 「マイキーの面倒を見ろ。東卍の面倒を見ろ。」目が千冬に動いた。 「なあ」
千冬は彼を見た。 顔が濡れていた。
「駅の近くにやきそばの店があるだろ」と場地は言いました。 「太い麺のやつ。一緒に食べたい」
千冬から言葉にならない声が出た。 強く頷いた。 「ああ」とやっと言いました。 「今すぐ買いに行く。今すぐ行ってくる」
「ありがとう」と場地は言いました。
目を閉じた。 少し時間が過ぎた。 もう少し過ぎた。
千冬がまだ抱いていた時、場地の息が止まってしまった。
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千冬から出た声は大きくはなかったが、人の中にあるものを全部空にするような声で、タケミチはその中のすべてを聞いた。 悲しみだけじゃなかった。 本当のことを知っていながら、間に合わなかった者の悲しみだった。
「知ってた」と千冬は言いました。 誰かに話しかけているのではなかった。 「裏切っていないってわかってた。あいつはずっと一人で戦ってたのに、俺は、俺は……」
止まった。 その文を終わらせる言葉がなかった。
後ろで、マイキーが一虎のほうに戻っていた。
タケミチは立ち上がりました。
マイキーが一虎の前に立っているところに歩いていって、二人の間に入った。
マイキーがタケミチを見た。 「どけ」
「嫌だ」
「お前も倒すぞ。どけ」
「嫌だ」
マイキーの拳がタケミチの顔に当たった。 頭が弾かれて、血の味がした。 それでもその場を動かなかった。
「するな」とマイキーは言いました。 声が割れた。 「あいつのために話すな。あいつが何を望んでいたか、俺に言うな」
「自分で刺した」とタケミチは言いました。 声が安定しなかったが、止まらなかった。 「一虎が背負わなくていいように。お前がしなくていいように。自分の死を使って、お前に頼んだんだ、マイキー。何を頼んでいたか、わかるだろ」
マイキーは何も言わなかった。 手が震えていた。
タケミチは上着の中に手を入れた。 何かを探すように、自動的に動いていた。 上着がずれて、ポケットから何かが落ちて地面に当たった。
小さなお守り。 一度回って、止まった。
マイキーがそれを見た。
ゆっくりとしゃがんで、拾い上げた。 指の間で裏返した。 顔が変わった。 長い間閉じられていた何かが、開くように変わった。
「どこで手に入れた」
「場地と最後に会った時」とタケミチは言いました。 「これが起きる前に」
マイキーはお守りを見続けた。 手がゆっくりと閉じた。
タケミチはマイキーを見て、何も言いませんでした。 もう言えることは何もなかった。 今、マイキーの中で起きていることは、言葉が届かない場所で起きていました。 二人の少年がかつて一緒に座って、何かを作ろうと決めて、名前をつけて、意味があると信じた場所。
後ろで、千冬はまだ場地を抱いていた。
救急車はまだ来ていなかった。
夜はとても静かでした。