マイキーとドラケンは二人ともタケミチの方を振り向いた。
誰も動かなかった。 庭には壊れたものが散らばっていた。 何年も持っていたもの、もう取り替えられないもの。 二人はその真ん中に立って、ようやく気がついたように周りを見ていた。
「全部壊したじゃないか」とタケミチは言った。 声が震えてしまった。 「全部。」
マイキーは足元の残骸を見下ろした。 ドラケンも同じようにした。 二人とも何も言わなかった。
アッくんが一歩前に出た。 「タケミチ、もう——」 「いい。」 タケミチはアッくんを見なかった。 目をマイキーとドラケンに向けたまま言った。 「お前ら二人は分かってない。 周りの人のことが見えてないんだ。 このままだったら、東卍がバラバラになってしまうぞ。」
マイキーは口を開いたが、すぐに閉じた。
タケミチは両手を握りしめた。 一歩前に出て、マイキーに向けてパンチを打った。
マイキーは簡単に横に躱した。 タケミチはそのまま勢いで前に倒れて、庭の端のゴミの山に顔から突っ込んでしまった。
一瞬、誰も動かなかった。
ドラケンが咳払いをした。 「タケミチ。落ち着けよ。」
タケミチは手をついて体を起こした。 髪から何か濡れたものが垂れていた。 何なのか分からなかった。
マイキーが前に屈んで目を細めた。 「頭に何かついてるぞ。」 「分かってる。」
マイキーはドラケンを見た。 ドラケンはマイキーを見た。 そして何も言わないまま、二人は同時に一歩後ろに下がった。
「ちょっと——」とタケミチが言いかけた。 「本当に臭いな」とマイキーは言った。 そのまま速い足で歩き始めた。 ドラケンも隣に並んだ。
アッくんたちも顔を見合わせた。 それから一人ずつ後ろに下がっていってしまった。 タケミチはゴミだらけのまま、庭に一人で残された。
髪を二度洗ってから、タケミチは近くの低い塀にマイキーとドラケンが並んで座っているのを見つけた。 二人は怒鳴り合いをしていなかった。 静かに話していた。 肩の力も抜けていた。 一時間前のあの空気はもうなかった。
二人はタケミチが近づくと顔を上げた。 ドラケンは首の後ろを掻いた。
「お前の荷物、すまなかったな」とドラケンは言いました。
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マイキーも頷きました。 「うん。ごめん。」
タケミチは二人を見つめた。 「そもそも何を喧嘩してたんだ?」
マイキーは少し考えた。 「正直、覚えてない。」
「パーちんのことだよ」とタケミチは言った。 「マイキーはパーちんを出すためにお金を払いたかった。 ドラケンはパーちんが自分で決めたことを尊重するべきだって思ってた。」
マイキーはしばらく黙っていた。 それから肩をすくめた。 「どっちも正しいかもしれない。」
ドラケンは何も言わなかったが、反論もしなかった。
タケミチは二人が並んで座っているのを見て、胸の中で何かがほぐれるのを感じた。 やった。 本当にできた。 ドラケンは生きている。 自分が来た未来、ドラケンが死んで東卍がバラバラになったあの未来は、今は違う。 変えられたのだ。
後ろから足音がした。 振り返ると、日向とエマが歩いてくるところだった。 エマの目はすぐにマイキーとドラケンに向いた。 二人が一緒にいること、落ち着いていること、戦おうとしていないことを確認するように見て、エマの顔が少し和らいだ。
日向がタケミチの前で止まった。 「八月三日、暇?」
タケミチは瞬きをした。 「え?」
「夏祭り。行きたいんだけど。」 日向はタケミチの顔を見た。 「一緒に。」
「行く」とタケミチはすぐに言いました。 「絶対行く。」
八月三日は暑かった。 祭りの会場は人でいっぱいだった。 タケミチは日向の隣を歩いていました。 前ではドラケンとエマが人混みの中を進んでいます。 日向は浴衣を着て髪を結んでいて、エマとドラケンの方をときどき静かに見ていた。
「あの子、ドラケンのことが好きなんだよ」と日向は小さな声で言いました。 「ずっとアピールしてるのに。」
「そうなの?」
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「ドラケンって気づかないんだよね。」日向はため息をついた。 「どうしようもないな。」
射的の屋台のところで、日向は立ち止まって腕を組んだ。 「あれ取って」と言いました。 棚の上の大きなぬいぐるみを指さした。
タケミチはおもちゃの銃を手に取った。 狙いを定めて、引き金を引いた。 弾は的に当たった。 的はゆれて、傾いて、棚から落ちる寸前で止まってしまった。
もう三回試した。 的はどうしても落ちなかった。
タケミチは銃を下ろした。
日向は表情を変えずに見ていた。 それから静かに言いました。 「頑張ってたよ。」
屋台を歩いていると、雨が降り始めた。 最初は小雨だったのに、すぐに本格的になってしまった。 二人は大きな木の下に駆け込んで、幹に背中をつけた。 雨の中で、祭りの灯りがぼんやり広がっていた。
日向が体重を移した瞬間、ふらついた。 下駄が大きすぎたのだ。 何かを掴もうとしたが何もなくて、タケミチは日向が倒れる前に腕を掴んだ。
そのまま、二人は近い距離で止まった。 頭の上では葉に雨が当たる音が大きく聞こえた。
「許す」と日向は言いました。 「前のこと。頑張ってたから、許す。」
タケミチは日向を見た。 日向は真っ直ぐこちらを見ていた。 肩に雨が落ちていた。
タケミチが前に体を傾けた。
電話が鳴った。
タケミチは目を閉じた。
「ごめん」と言いました。 画面を見た。 カズシだった。 電話に出た。
「聞いてくれ。」カズシの声は硬かった。 「ドラケンを見つけて警告しなきゃいけない。 マイキー派の中でまだ怒ってる奴らが、今夜ドラケンを狙ってるって聞いた。 マイキーとドラケンが仲直りしたのが、逆に一部の奴らをもっと怒らせてしまったんだ。 まだ終わってない。」
タケミチは電話を下ろした。 雨は続いていた。
日向を見た。 「ごめん。待っててくれ。」
日向の顔は分かっていると言っていた。 頷いた。
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タケミチは祭りの人混みの中を進んで、顔を探した。 屋台の裏の方の角を曲がったところで、足が止まった。
東卍のメンバーが三人、固まって立っていた。 その前に、タケミチが知らない男がいた。 見た感じ、メビウスの奴だ。 その男が、細くて顔つきの硬い若い男の手に何かを押しつけた。
刃だった。
「聖南」と一人が言った。
清水聖南は刃を一度手の中で回してから、指を握った。 「ドラケンは俺が殺す」と言った。
聖南の仲間の一人が振り返って、タケミチを見つけた。
逃げるかどうか判断する時間が一秒あった。 でも使えなかった。
男はタケミチの襟を掴んで引っ張ってきた。 聖南はタケミチを上から下まで見た。
「お前、飲み物買ってこい。」
それから仲間に頷いた。
奴らはタケミチが立ち上がれなくなるまで殴った。 それでもまだ数回殴った。 タケミチは地面に倒れたまま、初めて本当に理解した。 自分は強くなっていなかった。 マイキーとドラケンのそばにいて、二人の強さを自分の強さだと勘違いしていただけだ。 一人では、ずっとそうだったように弱いままだ。
聖南は屈んで、タケミチの手首と足首にガムテープを巻いた。 立ち上がって、もう一度タケミチを見てから、仲間と一緒に行ってしまった。
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日向が見つけてくれた。
どのくらいそこにいたのか分からなかった。 日向は隣に屈んで、まず口のテープを剥がしてくれた。 タケミチは止めようとしても泣いてしまった。
「頑張ったんだ」とタケミチは言いました。 「ここに戻ってきて、できる限りやった。 でも何もできなかった。 マイキーやドラケンみたいだったら止められたかもしれない。 でも俺はそうじゃない。 誰も守れなかった。」
日向は黙っていた。 それからタケミチの方に顔を近づけて、キスをした。
離れたとき、日向の顔は真剣だった。 「初めてのキスだった」と言いました。 「あなたが大切な人だから、あげた。あなたは他の人のために泣く。他の人のために怒る。自分のためには何もしない。」 日向はタケミチの目を見た。 「それは無駄じゃない。今まで見た中で一番の勇気だよ。」
タケミチはもう少し泣いた。 止められなかった。 それから止まった。
日向は手首のテープを剥がし始めた。
手が自由になったとき、タケミチは体を起こした。 「ドラケンを見つけに行かないといけない。」
日向は頷いた。 もう分かっていた。
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二本隣の道で、三ツ谷隆が祭りの薄くなった人混みの中を速く歩いていた。 タケミチは並んで走り始めた。
「三ツ谷」とタケミチは言いました。 「ドラケンが狙われてる。清水聖南が刃を持ってる——」 「知ってる。」 三ツ谷は顎を引き締めたまま歩き続けた。 「聖南だとは思わなかった。ペーやんかと思ってた。」 少し間を置いてから言いました。 「マイキーはパーちんを出すためにお金を使おうとしてた。ドラケンはパーちんが自分で選んだことだから尊重しなきゃいけないって言った。それが喧嘩の原因だったんだ。」 「知ってる。」
三ツ谷は横目でタケミチを見た。 「隊長たちには止められなかった。お前には止められた。」 何も疑わずに、でもその重さをそのまま乗せて言いました。 「マイキーとドラケンが離れたら、東卍も一緒に崩れてしまってたはずだ。ペーやん以外は最終的に全員、パーちんのことはどうしようもないって認めた。ペーやんだけが受け入れられなかった。」
タケミチは顔を上げた。 「ドラケンは今どこにいるんだ?」
三ツ谷の足が速くなった。
祭りの別の場所、屋台と灯りと薄くなった人混みの向こうで、ペーやんは暗がりを動いていた。 その前を、ドラケンとエマが歩いていた。 二人は後ろに誰がいるか分からないまま。