欧州・豪州間の自由貿易協定、8年越しの交渉を経てついに妥結
2026年3月24日、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長とオーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は、8年越しの交渉がついに合意に達したと発表した。この協定によりEUからオーストラリアへの輸出品の99%超の関税が撤廃され、EU輸出業者は年間10億ユーロ以上の関税負担を免れる見通しだ。
長年の難航要因のひとつが、発泡ワイン「プロセッコ」の名称権をめぐる争いだった。イタリアの生産者は原産地名称の独占的保護を主張し、オーストラリアのヴィクトリア州キング・バレーの生産者は従来の用法継続を譲らなかった。妥協案として、オーストラリアは国内販売での名称使用を10年間認められる一方、輸出への使用は段階的に廃止される。「パルメザン」についても同様の取り決めが適用される。
交渉は2023年10月に農業割当量と地理的表示の扱いをめぐる対立から決裂したが、米国の強硬な関税政策がEUに新たな貿易相手国の早期確保を迫り、2025年半ばに交渉が再開された。今回の合意は、2025年9月のインドネシアとの協定、2026年1月のインドとの協定に続く、インド太平洋地域での6か月以内3件目の主要通商協定となる。
協定の戦略的要諦はリチウムやマンガンなどオーストラリア産の重要鉱物に対する関税撤廃だ。世界のレアアース精製の約90%を中国が掌握する現状において、欧州にとって代替供給源の確保は産業的存続に直結する喫緊の課題である。
EUのオーストラリア向け輸出は今後10年で最大33%増加すると試算されており、乳製品は48%、自動車は52%の伸びが見込まれる。協定はまた、安全保障・防衛パートナーシップの締結も盛り込んでいる。発効には両国議会での批准が必要だが、農業団体を中心に反発も根強く、批准の行方は予断を許さない。