サイレンの音はどんどん大きくなった。 清水の仲間たちは顔を見合わせて、それだけで十分だった。 彼らは走り出した。 路地や裏道に散らばって、倒れた清水をその場に残して逃げてしまった。 一度も振り返らなかった。
タケミチがまだ笑っていると、日向が走ってきた。 エマも隣にいて、後ろには担架を持った救急隊員が二人いました。 エマはドラケンの隣に膝をついて、両手を彼の脇腹に当てた。 彼の名前を呼んだとき、声が震えていた。
「息してる」とタケミチは言った。 「まだ息してるから」
救急隊員たちは素早く動いた。 ドラケンを担架に乗せて、タケミチは誰にも止められなかったので後についていった。
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救急車の中は消毒薬のにおいがしていました。 ドラケンは狭いベッドに横になって、顔には酸素マスクがついていて、腕には管が通っていた。 タケミチは向かいの壁に背をつけて座って、点滅するモニターを見ていた。 自分の肋骨が息をするたびに痛かった。 顔の片側が腫れていた。 でも、気にしなかった。
ドラケンの目が開いた。 しばらく天井を見てから、頭を横に向けてタケミチを見つけた。
マスクを顔からずらした。 救急隊員の一人が付けておくように言ったが、無視した。
「お前が俺の命を救った」とドラケンは言った。 声は荒かった。
「やめてくれ」とタケミチは言いかけた。
「マイキーの面倒を見ろ」ドラケンはそれをただ普通に言った。 他の何かを言うのと同じように、特別な様子もなく。 そしてマスクを戻して目を閉じた。
モニターの音が変わった。 また変わった。 ドラケンの近くにいた救急隊員が何か鋭く言って、突然二人とも動き出した。 一人が両手を組んでドラケンの胸を強くリズムよく押して、小声で数を数えていた。
タケミチは壁に体を押しつけて、動かなかった。 目を離さなかった。
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病院の廊下は白くて、明かりが強すぎました。 タケミチはプラスチックの椅子に座って床を見ていた。 他の人たちが来るまで、ずっとそこに座っていた。 最初に三谷が来て、それからトーマンのメンバーが一人二人と来た。 中には血が出ているままの人もいたが、みんな早足で歩いていました。
マイキーが最後に入ってきた。 座らなかった。 廊下の真ん中に、腕を体の横につけて立った。 その顔は完全に静かだった。
「約束したんだ」とマイキーは静かに言った。 誰かに話しかけているわけではなかった。 廊下の先の閉まったドアの向こうにいるドラケンに向かって話しているようだった。 「一緒に世界を獲ろうって。 ドラケンは約束を破らない」 彼は周りを見回した。 「だから死なない。 信じろよ」
誰も反論しなかった。 みんな待った。
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ドアが開いた。 外科医がマスクを外しながら出てきて、廊下にいるみんなを見て、手術は成功したと言った。 龍宮寺健は生きていると。
その廊下から出た声は静かじゃなかった。 トーマンのメンバーは互いに抱き合って、叫んで、笑う人もいれば別の声を出す人もいた。 三谷は顔を両手で覆ってしまった。 誰かがタケミチの背中を強く叩いたので、倒れそうになった。
外に出て駐車場に集まっている人たちに伝えに行くと、言葉を聞く前からもう泣いている人が多かった。
ペーヤンは壁に背をつけて一人で離れて立っていた。 みんなの方には近づかなかった。
三谷が彼のところに歩いていった。 「パーちんのためだってわかってるよ」
「みんなに顔向けできない」
「ドラケンもわかってた」と三谷は言った。 「お前がなぜそうしたか。 それでもドラケンは毎日パーちんの親のところに行ってたんだ。 毎日だぞ、ペーヤン。 家族じゃないから入れてもらえなくても、少年院まで親を連れていって、外で待って、また家まで送って帰った。 それを毎日続けていたんだ。 ずっとパーちんのことを一番考えていたのはドラケンだったんだよ」
ペーヤンは顎を動かして、地面を見つめた。 それから一度頷いて、みんなの方に歩いていった。
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夜中を過ぎていました。 タケミチは病院の駐車場の上の空を見上げると、日付が変わっていることに気がついた。
8月4日。
ドラケンは8月3日に死ななかった。 任務は終わった。 お祭りのようなトーマンのメンバーたちの中に立って、その現実が体の中に落ちてくるのを感じた。
そのとき、マイキーがいなくなっているのに気がついた。
建物の角を回ったところに見つけた。 壁と柵の間の狭い場所にいた。 マイキーは通りに背を向けて立っていて、肩を前に丸めていた。 泣いていた。 静かじゃなかった。 もう強くいなくていいとわかったとき、一番恐れていたことが起きなかったとわかったときに人が泣くような、そういう泣き方をしていた。
タケミチは立ち止まった。 一秒だけ見た。 それから角の向こうに戻って、マイキーを一人にしてあげた。
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8月10日、タケミチが学校に歩いていくと、ほとんど知らない人が三人も、何か意味があるように彼の名前を呼んだ。
話は広まっていました。 語られるたびに大きくなって、ずっと殴られてきただけだった花垣タケミチが、どうやらメビウスとの戦いを止めた人物になっていた。 タケミチは照れた笑顔でそれを全部聞きながら、心の中で思っていた。 戻りたくない。
自分が来た現在は灰色で小さかった。 でもこの現在にはドラケンが生きていて、マイキーが傷ついていなくて、いい理由で自分の名前を知っている人たちがいる。 ここにいたかった。
病院にドラケンを見舞いに行った。
ドラケンはベッドから彼を見て言った。「ひどい顔だな」
「たくさん殴られたから」
「歩き方が背中を痛がっているみたいだ。背筋を伸ばせ」ドラケンは彼をじっくり見た。「なんでお前はいつも謝ろうとしているみたいな顔をしているんだ?」
「これは私の顔で――」
「顔じゃない。全部だ。姿勢も、声も、全部。直せ」ドラケンはゆっくり首を振った。
タケミチは口を開けた。 それから、ずっと胸の中で静かにしていた何かが喉の上まで押し上がってきて、自分の口から大きな声が出るのが聞こえた。 「わかってない。俺はずっと誰にも見えない存在だった。やっと大切にされる気持ちがどういうものかわかるか?絶対わからないだろう――」
ドラケンは最後まで聞いた。 それからベッドの横に手を伸ばして、折りたたんだ服を取ってタケミチに差し出した。
制服のジャケットだった。 トーマンのジャケットだったが、タケミチが見てきたものより古くて、布地が少し色あせて、柔らかくなるほど使い込まれていた。
「マイキーから」とドラケンは言った。「トーマンを最初に始めたときに彼が着ていたやつだ。着なくてもいい。それはお前が決めることだ。でもお前に持っていてほしかったんだ。お前はトーマンを救った」一息置いた。それから前に身を乗り出して、東京卍會の副総長、龍宮寺健が、花垣タケミチに頭を下げた。「ありがとう」
タケミチはジャケットを持ったまま立っていて、言葉が出なかった。
「マイキーは屋上にいる」とドラケンは言って、背をもたせた。「あそこで寝てるんだ。たぶんな」
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屋上へのドアを開けると、コンクリートの床と広い空があった。 マイキーは向こう端の低い壁の縁に座って、下の通りを見ていた。
振り返らなかった。「なんでハンマがトーマンを内側から壊そうとしたんだ?なんで清水を使ってドラケンを狙ったんだ?」独り言のように言った。「そしてなんでお前にわかったんだ?誰も気づく前に」少し黙った。「お前は何者なんだ、タケミチ?」
タケミチは口を開けた。 本当のことを言えたとしても、使えなかった。 黙ったまま口を動かしていると、マイキーが待っていた。
それからマイキーが振り返って、彼の服を見て言った。「何着てんの」
「これは――俺は――」
「伝説なのにそんな格好か」マイキーは首を振った。それから口の端が少し動いて、静かに言った。「ありがとう。ケンのことで」
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戻らなければならなかった。
いつもそうとわかるように、今もそうとわかった。 戻りたいからではなく、自分が来た現在が待っていて、そこにナオトがいて、この一つの戦いだけでは終わらない仕事があるからだった。
まず日向の家に行った。 彼女がドアを開けて見た目には、驚いているわけではなかったが、他の人が見逃すかもしれないものに気づいているような、そういう表情だった。
「お前を全部に巻き込んでしまった」とタケミチは言った。 「ごめん」小さな箱を差し出した。 中には四つ葉のクローバーのネックレスが入っていた。 「幸運のお守りらしい」
日向はそれを受け取って、しばらく彼を見た。 それから笑った。 目まで笑っていた。
ナオトが廊下の奥に現れた。 タケミチは彼を見て、ナオトもタケミチを見て、二人とも次に何が起きるかわかっていた。
タケミチは手を伸ばして握手した。
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ビデオ屋はいなくなったときのままだった。 つまり、彼はレジの後ろに立っていて、店長の長谷川がいかに彼の仕事ぶりが問題かを話している最中で、長谷川の顔を見ると、もうしばらくそれが続いているようだった。
タケミチはまばたきしながら立っていた。 絶対にクビになったと思っていた。
携帯を確認した。 連絡先にナオトの名前はなかった。 知らない美容院の予約の通知があった。
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美容院は小さくてきれいでした。 千堂篤志が奥の方に研修生のエプロンをつけて立っていて、緊張した様子だった。 センドーが緊張しているのは不思議な感じがした。
「美容師なのか」とタケミチは言った。
「アシスタントだ」とセンドーは直した。 「始めたばかりで、まだシャンプーと片付けしかやってないけど」少し背筋を伸ばした。 「来月から本当のカットができるようになるんだ。本物のカット」タケミチの目を見た。 「お前が来てくれなきゃならないんだよ、最初のお客さんとして。そういう約束をしただろ?最初はお前がいいって」
タケミチはその約束をした記憶がなかった。 でも、その約束があるということが何を意味するかはわかった。 センドーがここにいて、きれいなエプロンをつけて、来月のことを話しているということが。
過去を変えた。 それは続いていた。
携帯が鳴った。 知らない番号だった。
出た。
「やったんだな」ナオトの声だった。 記憶の中よりも年をとっていたが、間違いなく彼だった。 「本当に変えたんだ。連絡しようとしてたんだが、姉に会いに行かないと」
タケミチは美容院のドアのところに立って、顔に午後の太陽を受けながら、生きているどこかにいる日向のことを考えた。 ベッドの上で背筋を伸ばせと言ったドラケンのことを考えた。 暗い壁の横で一人で泣いていたマイキーのことを考えた。
「ああ」と彼は言った。 「行こう」