メイヨークリニックの大学院生、キーナン・ピアソンとサラ・ジャシムが廊下で話していたとき、一つのアイデアが生まれた。「DNAを使ってゾンビ細胞を探せないか?」という、少し突飛に聞こえる提案だった。
その会話から生まれた研究が、老化科学における重要な進歩として注目されている。研究チームは100兆以上の合成DNA配列を調べ、老化細胞に選択的に結合できる「アプタマー」と呼ばれる分子を発見した。この成果は学術誌『Aging Cell』に掲載された。
老化細胞とは、分裂を止めながらも死なずに体内に留まり続ける細胞のことだ。年齢とともに蓄積し、がんやアルツハイマー病、関節炎などとの関連が指摘されている。これまで、生きた組織の中でこれらの細胞を確実に見分ける方法がなかった。
研究チームはSELEXという技術を使い、「6756」と「6762」と名付けられた二つのアプタマーを発見した。どちらも、健康な細胞にはほとんど存在しない、老化細胞の表面にあるフィブロネクチンというタンパク質の変異体に結合することが確認された。
ただし課題もある。この実験はマウスの細胞を使ったものであり、人間の老化細胞には結合しなかった。人への応用にはさらなる改良が必要で、臨床応用にはまだ数年かかると見られている。それでも、生きた組織の中でゾンビ細胞を健康な細胞と区別できるツールが初めて実証された意義は大きい。