アルフォンスは手のひらを開いて、賢者の石を空中に投げた。
プライドが半秒だけ静止した。 キンブリーの目が石を追った。
その半秒で十分だった。 アルは周りの石炭の粉を錬成して大きな煙の雲を作り、暗闇の中をキンブリーに向かって突進した。 相手が気づく前に後ろから攻撃したのだ。 キンブリーはすぐに反応した。 手のひらに錬成陣が光り、反撃しようとした。 しかしアルは石と賢者の石を合わせた壁を素早く作ったので、攻撃を防ぐことができた。 次にプライドの影が来た。 影は壁を紙のように切り裂いた。 アルは防御を完全に捨てて、ただ動き続けた。 影が鎧の欠片を削り取るたびに、アルは賢者の石を使って金属を元の形に戻した。
武器が必要だった。 アルの目が、戦いの中で捨てた金属の足に向いた。 それを錬成して重くて幅の広い刃にした。 プライドの次の影の攻撃を刃の平で受け止めたのだ。 そしてさらに錬成を続けて、受け止めながら刀の形を変え、プライドの防御の隙間に突起を伸ばした。 突起はホムンクルスの体を擦った。
キンブリーが二人の間に入った。
アルはすぐに向きを変えて、プライドを動けないように閉じ込めようとした。 影を石で封じ、岩で包んだ。 しかしプライドはほとんど即座に抜け出してしまった。 その表情は冷たかった。
「同じ手には二度引っかからない」とプライドは言った。
プライドが一歩前に進んで止まった。 足元の近くに、フーの仙道閃光爆弾が一つ落ちていたのだ。
プライドはそれを見た。
アルは二つ目の閃光爆弾を投げた。 賢者の石で修復しておいたものだ。 それをプライドの影の塊に直接投げ込んだ。 光が影を消した。 同じ動きで、アルは天井と床と壁から石を噴出させてドームを作り、プライドを中に封じ込めた。
静寂。
キンブリーがゆっくりと一度だけ拍手した。 音がトンネルの中に空しく響いた。 「見事だ」と彼は言いました。 「その石はかなりの力を与えてくれるな。」 彼は首を傾けました。 「では、なぜそれを使って自分を取り戻さなかったんだ?お前と兄貴。逃げ出して、全てを直す手段があったのに。なぜしなかった?」
アルはしばらく黙っていた。 「その方法では、みんなを救うことができなかったからです。」
キンブリーはアルをじっと見ました。 「等価交換か」と彼は言いました。 まるで病気の名前を言うように。
「いつも二つの選択肢がある」とアルは言いました。 賢者の石を差し出しながら。 「なぜそうじゃないといけないんですか?なぜ二つのことが同時にできないんですか?」
キンブリーは笑ったが、その笑いは目まで届かなかった。 「逆のことが起きる可能性だってあるぞ。」 彼は口を開いた。 奥歯のところに、赤く光るものが見えた。 ずっとそこに隠してあった、キンブリー自身の賢者の石だった。
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中央司令部の地下廊下では、アレックス・アームストロングが錬成で作ったトゲをスロウスの体に何本も突き刺したが、ほとんど効果がなかった。 スロウスは体を貫く金属を少し面倒そうに見下ろしてから、引き抜いた。
アレックスがまた攻撃した。 今度はスロウスの頭に拳が当たった。 オリヴィエはホムンクルスが怯む前に動いていた。 剣をその衝撃の点に当てて押し込んだ。 抵抗が変わるのを感じた。 内側が柔らかかった。 皮膚が割れた場所だ。
そこだ。 表面の内側。 そこなら傷つけることができる。
スロウスはすでに再生していた。 肉がつながり戻っていき、その表情は変わらなかった。 「何もかも」と彼は言った、「面倒だ。」
後ろから足音がした。 兵士が二人、角を曲がってきた。 銃を構えて、一人がオリヴィエに降伏するよう命令しようと口を開いた。
そのとき、二人はスロウスを見た。
ホムンクルスは一秒もかからずに二人の間の距離を詰めた。 兵士たちは床に倒れる前に死んでいた。 通り過ぎるとき、スロウスの肩がオリヴィエの怪我した腕にぶつかった。 骨の中で何かが軋み、熱が首まで広がった。
オリヴィエとアレックスは体勢を立て直した。 何かがおかしいと感じた。
「速すぎる」とアレックスは静かに言いました。
「自分では止まれないんだ」とオリヴィエは気づいた。 「あの速度では、方向を変えることができないのよ。」
スロウスが二人の方を向いた。 「私は最速だ」と彼は認めた。 特に誇るわけでもなく。 ただの事実を、天気を伝えるように口にしただけだった。
スロウスが突進した。 アレックスは腕を上げて受け止めようとしたが、その重さはとてつもなかった。 スロウスは速いだけでなく巨大だった。 肩がアレックスに当たり、彼は滑るように押し飛ばされた。 オリヴィエは横から攻撃しようと動いたが、ブーツが床の石に引っかかってしまった。 倒れたとき、スロウスはもう向き直っていた。 肩を落として突っ込んできた。 衝撃でオリヴィエは壁に叩きつけられて、後ろの石に亀裂が入った。
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新しいドームが砕けた。
プライドはゆっくりと瓦礫を踏み越えて出てきた。 急ぐ様子はなかった。 近くにキンブリーが立っていた。 二人ともアルがまだトンネルのどこかで見ていることを分かっていた。
アルが姿を現し、また煙の雲を作った。 プライドは今度は視覚ではなく嗅覚を頼りに動いた。 鎧の中の生きた魂の匂い。 それは特別で間違えようがなかった。 煙の中を進んで、プライドの影がちょうど動いていたアルを捕まえた。 影が鎧の手足に巻きつき、強く引いた。
「賢者の石があっても」とプライドは言った、「お前一人では勝てない。」
アルは抵抗をやめた。 「一人で勝とうとしているわけじゃないから、それでいい。」 手を開いた。 空だった。 石はなくなっていた。
プライドはそれを理解しようとした。 何度も作った煙の雲は、視覚を遮るためだけではなかった。 空気の流れ。 風が、追っていた匂いを運び去っていたのだ。
誘導されていた。 そして今、完全に匂いを失ってしまった。
後ろからキンブリーに体当たりをした者がいた。 ハインケルだった。 キメラで、血だらけでほとんど立つのがやっとだったが、まだ力が残っていた。 顎をキンブリーの喉に食い込ませたのだ。 キンブリーの気管がその噛み付きで圧迫された。 倒れてしまった。
「なぜ——」とキンブリーはかろうじて言った。
マルコーがトンネルの端の暗がりから出てきた。 手に賢者の石を持ち、難しい決断をすでに受け入れた人の虚ろな表情をしていました。 ハインケルを動けるくらいまで治療したのです。 これができるくらいまで。
プライドはその全てを見た。 石のないアル、キメラ、マルコー。 何も言わなかった。 影に手を伸ばした。
ハインケルがアルの足を一本つかんで、プライドの届かない場所まで引きずっていった。 もう一方の腕でキンブリーの体も引っ張りながら。 トンネルの曲がり角から一対のヘッドライトが現れた。 タイヤが石の上で軋んだ。
ヨキが運転していた。
マルコーは呆然と見ていました。 「どうやって——」 「カナマの兵士たちを錬成で縛って、車を奪いました」とマルコーは言いました。 そしてヨキが実際に運転してきたことに気づいたようでした。 小柄な男を見た。
ヨキの表情は複雑なものだった。 泣いていた。 「いつも戦いをあなたたちに任せてしまっていて」と彼は言いながら、片手で目を拭き、もう一方の手はハンドルの上に置いていた。 「私も助けたかったんです。一度だけでも。」
ハインケルはキンブリーの体をプライドの方に投げた。 攻撃としてではなく、ただ空間を埋めるために、一秒稼ぐために。 そして助手席のドアを開けてアルを中に押し込んだ。 車が前に飛び出した。 プライドの影がリアバンパーのあった場所に落ちたが、そこには何もなかった。
プライドはトンネルの曲がり角に消えていく車を見送った。 「構わない」と彼は言った。
体を投げられたときに置き去りにされたキンブリーを見下ろした。 キンブリーの胸は短く不規則に動いていた。 気管が潰れていた。 彼はプライドを見上げた。 その表情には、自嘲的な面白さのようなものがあったかもしれない。
「間抜けだな」とキンブリーは言った。 声が湿った囁きになっていた。 「キメラに仕留められるとは。」 少し間があった。 「この世界がどうなるのか、ずっと見てみたかった。」
助けてくれ、とは言わなかった。 そういうことを言う男ではなかった。
プライドの影が伸びて、キンブリーを取り込んだ。 キンブリーの意識を自分の中に引き込んだのだ。 プライドがなぜそうしたのかは、誰にも分からなかった。
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オリヴィエは見知らぬ天井を見て目を開けた。
床に倒れていた。 周りには銃を構えた兵士たちが立っていて、オリヴィエと兄に狙いを向けていた。 状況を確認した。 腕の怪我、骨折が何ヶ所か。 アレックスが隣にいた。 左腕がおかしな角度で垂れ下がっていた。 肩の様子から分かった。 脱臼していた。
そして二人と兵士たちの間には、男の胴体くらいの太さの錬成された金属のトゲが、スロウスの右腕と頭を貫いてホムンクルスを壁に固定していた。 スロウスが突進してきたとき、アレックスがぎりぎりで手を上げてオリヴィエをかばいながら、同時にトゲを錬成したのだ。
スロウスは今は動けない状態だった。 とりあえずは。
「降伏しろ」と兵士の一人が言った。
アレックスの表情が痛みから憤慨に変わった。 オリヴィエを見た。 「ここで死んだら、家の屋敷を引き継ぐのは私だけになってしまいます。」
「ムスタングに残すわ」とオリヴィエは言った。
アレックスは本当に傷ついたような顔をしました。 「家族に相談もなしに?」
「彼なら使うでしょう。」
「それは問題の——」アレックスは気を取り直した。 「これは怒りますよ。」
兵士たちは二人の顔を交互に見た。 スロウスの頭を貫いているトゲが音を立てていた。 ホムンクルスが再生するにつれて、戻ってくる骨と筋肉に金属が押されているのだ。
奥の廊下から銃声が聞こえてきた。
兵士たちがその方を向いた。 ドアが開いた。 向こう側の兵士たちはムスタングの部隊ではなかった。 彼らはマネキン兵器に追い返されていた。 無表情で、何体もいて、賢者の石が死体を動かし続けていた。
「あれは何だ」とオリヴィエの近くにいた兵士の一人が言った。
「私の部下じゃない」とオリヴィエは言いました。 「あなたたちの上官が送り込んだのよ。なぜかと中央司令部に聞いてみても、答えないでしょうけど。」 その兵士の顔に理解が広がっていくのを見た。 「あなたには選択肢がある。私を撃てば、あれに一人で立ち向かうことになる。それとも銃を下ろすか。」
スロウスの固定されていた手が切り離された。 床に落ちて、手首から再生し始めた。 頭を貫くトゲが、スロウスが動き始めるにつれて亀裂が入った。
その兵士は銃を下ろした。
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もっと深い地下で、メイが走っていた。
エンヴィーが追いかけていた。 新しい体は四肢を伸ばして届く範囲を広げ、マネキン兵器を波のように前に送り込んでいた。 「包囲されているぞ」とエンヴィーは呼びかけた。 「あの兵士たちは殺せない。中の石がそれを許さない。お前が一体壊しても、私が吸収できる。」
メイは着地して状況を確認して、また走った。 「そうね」と彼女は言った、「でも数が多いほど、走れる廊下も多い。」 角を曲がると、追手の音が遠ざかっていった。
走りながら、メイはあの兵士たちの体の中の賢者の石について考えていました。 その中に閉じ込められた命について。 一族の薬。 恐ろしい解決策だが、もしかしたら唯一の方法かもしれない。 彼女はそれを頭の片隅に置いておいた。
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白い部屋では、マネキン兵器が壁の穴から次々と入り続けていて、その数が問題になっていた。
ザンパノの針はほとんど使い果たしていた。 ジェルソの唾液腺も乾きかけていた。 エドは槍を錬成してまだ動き続けていたが、押し返されていて、ある瞬間、兵士の一体に瓦礫に追い詰められて逃げられなくなってしまった。
マネキン兵器たちの後ろの壁が、内側から爆発した。 最初に炎が入ってきた。 正確に形を持った炎で、その道にいた兵士たちが倒れた。 煙と落ちていく瓦礫の中から、ロイ・ムスタングが歩いてきた。 コートは乱れておらず、表情は穏やかで、まるでただドアから入ってきたかのようだった。
ムスタングはエドを見た。 エドはムスタングを見た。
「まったく」とムスタングは言いました。 「お前はどこに行っても見事に厄介なことを起こすな。」 部屋を見回しました。 死体、瓦礫、まだ進んでくるマネキン兵器たち、疲れ果てたキメラたち、遠くの壁のスカー。 「手が必要そうだな。」