アルフォンスは暗闇の中で声を聞いた。
「まだ早い」と声は言った。 「お前はまだ死んではいけない」
最初、その声は子供のようだった。 小さくて、やわらかくて、どこか頼りない。 でも次の瞬間、声は変わった。 もっと古くて、もっと大きくて、人間の喉から出るような声ではなかった。 アルは暗闇の中で声の主を探したが、何も見つけられなかった。 それから目が覚めた。 いや、何か目が覚めるようなことが起きた。 でも暗闇はそのままだった。
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カナマの町は静かだった。 エドたちが着いたとき、道の砂埃がまだ空気の中にあった。 町の人が端の方向を教えてくれたので、エドは最後の道を一人で歩いた。 顎はもう固く閉じていた。
ホーエンハイムはそこにいた。 エドが覚えているのと同じ姿だった。 大きくて、静かで、他の人とは違う時間の感覚を持つ人間のように急がない。 エドたちが近づく音を聞いて、ホーエンハイムは振り向いた。
エドは義手の腕でホーエンハイムの顔を殴った。
遠慮のない一撃だった。 ホーエンハイムの頭が横に揺れて、一歩下がった。 力というよりも驚きのせいだった。
「エド」ホーエンハイムが口を開いた。 「ずっと待ってた」エドは言った。
ホーエンハイムは体を起こして、息子の後ろの仲間たちを見た。 ゴリラのような体格の大男。 ライオンの特徴を隠しきれないキメラ。 そして、自分の体に入ることを選ばなかったような、落ち着いた動き方をする若い男。
「友達を連れてきたのか」ホーエンハイムは言った。 「同じ目的があるだけだ」ハインケルが言った。 「深く考えるな」
「このグループのリーダーは俺だ」グリードが手を上げた。 その目が少し人間ではない角度で光を受けた。 「一応、はっきりさせておく」
ホーエンハイムはグリードの手のウロボロスの刻印をしばらく見た。 何も言わなかった。 それからエドを見た。
「約束の日は明日だ」エドは言った。 ホーエンハイムは二秒間黙っていた。 それからゆっくりと頷いた。 「中に入れ。���部話す」
彼は全部話した。 夕方のほとんどの時間がかかった。
ホーエンハイムが話し終えたとき、エドはその情報を胸の中で受け止めて、長い間黙っていました。 二人の間の火はもう炭になっていました。
「お前は本当に受け入れられなかったんだな」ホーエンハイムは言いました。 「真実を知ったとき。でもアルフォンスは受け入れた。リオールで会ったとき、俺が話したことを全部聞いて、怖じけなかった」
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エドの沈黙は、そのあと少し違う重さを持ちました。
「わかってほしいことがある」ホーエンハイムは言いました。 「俺は賢者の石だ。何百もの魂が一つの体に縛られている。それがお父様の望みだった。それを使って、お父様は力を作り上げたんだ。約束の日に、奴らはそれを使おうとするかもしれない」彼はエドをまっすぐ見ました。 「それで。お前は俺をどう使うつもりだ?」
「使わない」エドは言った。 ホーエンハイムは瞬きした。 一瞬だけ、何かが彼の顔を横切った。 「使わない」
「お前を作るために人間の命が使われた。俺はその命をお金みたいに使えない。どんなに便利だとしても、そんなことはできない」
ホーエンハイムは黙っていました。 それから言いました。 「わかった」ゆっくりと息を吐き出した。 「じゃあ、俺が知っていることを話す。約束の日には日食がある。お父様が仕組んだんだ。ずっと作り上げてきた大きな錬成の一部だ。俺にはそれを防ぐ計画がある。でも一人ではできないので、お前の力が必要だ」
「嫌だ」エドは言った。 「エド」 「聞こえた。言っていることはわかる。俺は自分のやり方でお父様を止める」エドは立ち上がった。 「お前に関わってもらう必要はない」
彼はドアの方に歩いた。 それから、まだ背を向けたまま止まった。
「ピナコさんから何か聞いた」エドは言った。 「トリシャの最後の言葉だ。 約束を守れなくてごめんって言ったそうだ」 少し間があった。 「そして、先に死んでしまってごめん、とも」
エドは出ていった。
後ろで、火の光のある部屋の中で、ホーエンハイムは長い間動かなかった。 涙が来たとき、静かに来た。 見ている者は、消えていく炭だけだった。
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カナマの外れにある食堂はその時間にしては客があった。 エドは前に置かれた丼を食べずに座っていました。
「あの人と話せばいいじゃないか」ハインケルは言いました。 「本当の話を。殴って宣言するだけじゃなくて」 「平気だ」 「スープを見つめてるぞ」 「考えてるんだ」 「スープのことを?」 「違う」エドは箸を置いた。 「思ってたのと違うんだよ、あの人が。 何年も頭の中でイメージを作ってきたのに、今あの人は普通に、筋の通ったことを言ってて、それが……助けにならない」
「あの人はお前の父親だ」ダリウスは言った。 キメラとしての本能が人間の言い訳への我慢をなくしてしまったような、はっきりした言い方だった。
「出ていったんだ」 「そうだな」グリードも同意した。 腕を組んで後ろに寄りかかって、複雑な顔で何かおかしそうなものを見るような目でエドを見ていた。 「でもお前はまだここで、あの人のことを話してる。 普通、どうでもいい人間のことはそういうふうにはならないぜ」
エドにはその言葉への返事ができなかった。 また自分のスープを見つめ続けた。
自分の火のそばで一人、ホーエンハイムは両手を膝の上で重ねて静かに座っていました。 トリシャのことを考えていました。 最後に会ったとき。 守れなかった約束。 「帰ってくる」と言った。 でも間に合わなかった。
でも今度は帰れる。 これから来るすべてのことの後で、約束の日の後で、彼女のところへ帰れる。 どんな形であっても。
彼はその思いを胸に、火が低くなるまで座っていました。
翌朝、出発する前に、エドは小さな店に寄って赤い布を一枚買った。 地面の上に広げて、両手を布の上に置いて、錬成を流した。 布は手がもう知っているパターンに従って形を変えた。 立ち上がってそれを着ると、赤いジャケットがまるでずっとそこにあったように肩に落ち着いた。
ハインケルが彼が襟を整えるのを見ていました。 「新しいコート?」 「古いデザインだ」エドは言った。 それ以上説明しなかった。 その顔は言わないことを言っていた。 これが最後になるかもしれないと思っているのだということを。
彼らはカナマを早い光の中で出発した。
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道をしばらく歩いたとき、グリードが言った。 「お前は俺たちが一緒にいる理由をちゃんと説明してないよな」 「お前たちは俺のために働いてる」エドは言った。 「俺は自分のために働いてる。正確に言えばお前が俺のために働いてる」 「この話はもうしたくない」 「まあいい」グリードはポケットに手を入れて、気にせず歩いた。 「どうせ来るから」
ハインケルとダリウスは後ろで目を合わせた。 「行くところがないんだ」ダリウスはシンプルに言った。 「それに、キメラであることにはまだ探っていない利点があるかもしれないから」 ハインケルは大きな肩を一つ揺らした。 「同じだ」
エドは彼らを見た。 こんなにバラバラな仲間たちを。 体を共有する王子と強欲のホムンクルス。 元に戻れないものに錬成されてしまった二人のキメラ。 エドは何も言わずに道に顔を向けた。
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そして歩みを止めた。
前の道にアルが立っていた。
エドの顔がすぐに開い���。 「アル!」一歩踏み出した。 「来るな」リンの声がグリードのものと入れ替わって、鋭く、刃を抜くような集中があった。 手を出してエドの前を遮った。 「近づくな。感じる。プライドがいる」
エドは止まった。
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鎧はとても静かに立っていた。 それから、ゆっくりと、影が来た。
流れるのでも溢れるのでもなく、影は伸びた。 鋭く、方向を持って、暗い刃のように鎧の表面から空気に向かって突き出た。 エドは横に飛んで、攻撃は彼が立っていた地面を割った。 グリードは硬化した腕で顔を守った。 ハインケルとダリウスは道の両側に倒れ込んだ。
「お前は裏切ったのか」影の中から声がした。 育ちのよい、礼儀正しい、まったく温かみのない声だった。 子供の声が大人のように装っているような声だった。 グリードに向かって、面白い間違いを見るような軽い好奇心で話しかけた。 「予想外だ。お前の魂は本来あるべきほど強くない」
リンが、今グリードの目の奥から答えた。 「十分強い」
「プライド」エドは言った。 また立ち上がって、両手を上げた。 「お前だな。アルの鎧の中にいる」 声は落ち着いていた。 落ち着かせようとしたからだ。 「俺の弟の体を使ってる」
「お前の弟の体は空だ」プライドは言った。 「住む者が必要だった」 少し間があった。 「なかなか使いやすい」
影がまた伸びた。 十以上の暗い点が同時に、それぞれ違う方向に動いた。 エドは手を叩いて道に打ち込み、錬成した岩の壁を作った。 影は紙のように壁を貫いた。 エドはもう動いていた。
「俺を殺せない」エドは身をかがめながら言った。 「人柱だから。生かしておく必要がある」
「腕や足をいくつか取り除くことはできる」プライドは気持ちよく言った。 「それはお前を殺さない」
次の攻撃がエドの義手の肩に向けて、まっすぐ狙ってきた。
エドは転がった。 影が後ろの地面を削った。
グリードが前に出て、硬化が波のように皮膚に広がった。 絶対の盾。 影の束を腕で受け止めた。 衝撃で体が揺れた。 影がグリードの腕に巻きついて、引っ張った。 前に引き込まれた。
「お前は邪魔だ」プライドは言った。 「先にお前を片付ける」
「グリード」エドが声を出した。 「平気だ」グリードの声は苦しかった。 影が締まっていた。 「考えろ。頭を使え。暗い場所では戦えない。影には光が必要だ。光を消せ」
エドの目が後ろの町を見回した。 それから考えが完全にまとまる前に、体が動いていた。
カナマの外れで地面に打ち込んで、錬成を波のように広げた。 石を通して感じられる配線や管を通って、遮断して、向け直して、切った。 カナマの明かりが一度に全部消えた。
影が消えた。
沈黙がすぐに来て、完全だった。 プライドは何も言わなかった。 道は暗闇の中に消えて、他のすべても消えた。
「さて」ハインケルが、エドの左のどこかから言った。 「これで俺たちも何も見えない」
「俺には聞こえる」ダリウスが言った。 「それに嗅げる。少しだけましだ」
エドは両手を出したまま立って、目が使えない中で考えた。 「影はアルの鎧の中に来ていた」声を低く保ちながら言った。 「でもいくつかは茂みからも来ていた。違う角度だった。プライドの本当の体、容器が、どこか近くにある」
「あの子供だ」グリードは言った。 「セリム・ブラッドレー」
「ずっとここの近くに隠れていた」エドは言った。 「アルを通して影を出して、アルが源に見えるようにしていた」
「容器が弱点だ」グリードは言った。 「誰かが本物の体に近づければ」
東の茂みから音がした。 短い、激しい動きの音。 それから、小さな男の子の声がするべきでない音を出した。
ハインケルはもういなかった。 キメラの体は完全な暗闇の中で、人間の目には及ばない精度で音と匂いで追えた。 エドが「近くに」と言った瞬間に動いていた。 今、下草の中で争う音がしていた。 人間の音と、人間ではない音と、質量と質量がぶつかる衝撃と。
「ハインケルが捕まえた」ダリウスが確かめた。
エドは音の方を向いて動き出した。 「アル」声を上げすぎないようにして言った。 「アル、動くな。今、対処してる」
鎧は答えなかった。 アルが中にどういる状態であっても、プライドがまだ体を動かしていた。
「エド」ダリウスの手が腕をつかんで止めた。 「プライドが対処されるまで、鎧に近づくことが危険だ。離れていろ」
エドは止まった。 手が拳になった。 完全な暗闇の中で、三メートル先に弟の体があって、待った。
ダリウスは頭を傾けた。 「こっちだ。声を聞いて来い。ハインケルは北東二十メートルのところにいる」
二人は一緒に暗闇の中を進んだ。 エドはダリウスの肩に手を置いて、キメラの感覚をすべて信頼した。
それからダリウスの手が固く締まった。 「下がれ。今すぐ」
二人は伏せた。 巨大な何かが頭上の空気を押しのけた。 腐敗と盲目の飢えの匂い、さっき二人がいた場所に落ちる岩のような衝撃音。
グラトニーだ。
「これで俺たちをどうやって見つけたかわかった」ダリウスは暗い声で言いました。 「匂いだ。ずっと俺たちを追ってきたんだ」 すでに動きながら、エドを横に押して、口を開けて迫ってくる巨大な影と自分の間に体を置いた。 「完全に匂いで動いてる。ということは俺でも対処できる」
「ダリウス」
「ハインケルを助けに行け」ダリウスの声は低くなって、荒くなって、人間の部分が引いていった。 暗闇の中でシルエットが大きくなった。 「こっちは俺がやる」
続く音は巨大だった。 とても大きいものがそれと同じくらい大きいものにぶつかって、衝撃が地面を揺らした。 二度目の衝突。 それからエドのすぐ左で何かが当たって、エドは転がった。 ダリウスが振った腕がエドをかすって、エドは地面に落ちて土の味がした。
「すまん!」ダリウスが呼んだ。 あまり申し訳なさそうには聞こえなかった。
「平気だ!」エドが返した。 これもあまり平気には聞こえなかった。
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グリードは暗闇の中にしゃがんで状況を評価した。 同時に二つの戦いが起きていた。 一つは本当の姿になったグラトニーが狭い場所で暴れる戦いで、もう一つはほとんどの国より長く生きているホムンクルスとの戦いだった。 エドは何も見えない。 鎧は大体六メートル先に立っていて、いつまた攻撃を始めてもおかしくない。
「俺に任せろ」リンが内側から言った。 「わかってる」 「俺にはグラトニーのいる場所がわかる。お前にはわからない。こんな状態では」 「わかってると言った」
グラトニーの拳が右腕に当たって、硬化を割って、再生する組織に衝撃を走らせた。 グリードは歯を食いしばった。
「今だ」リンは言った。
グリードは手を放した。
リンはグリードの体の目を開けて、視覚ではない感覚で空間を把握した。 ホムンクルスのエネルギーの流れ、空気の動き、暗闇の中の人間ではないものを見つける感覚。 待った。 グラトニーが匂いを追って近づいて来た。 リンはそれを避けるのではなく、動きの中に踏み込んで、弱点のある場所に正確に打ち込んだ。
グラトニーが倒れた。
それからグラトニーは立ち上がって、変化する音が湿って、構造的で、どこかおかしかった。 本当の姿が暗闇の中に広開いた。 体の中に真理の扉の口が開いて、攻撃が集まり始めるのがリンには空気圧の変化でわかった。
茂みが爆発した。
状況が許すはずのない速さで何かが動いた。 低く地面に近い体勢で、一本の腕を伸ばした人影。 腕の先は手ではなく、機械の金属と刃だった。 わずかな環境光を受けた。 刃がグラトニーに一撃。もう一撃。それから素早く四撃。解剖学的に正確に、ホムンクルスが追いつくより早く、再生する組織を切り刻んだ。
グラトニーが止まった。 巨大な体が揺れた。
人影が立ち上がった。 短い。若い。左腕が手ではなく、機械の金属のきれいな線と伸びたままの刃で終わっていた。
「ランファン」リンは言った。
彼女はリンの声の方を向いた。 顔は静かだった。 義手は新しかった。 金属にはまだ最近取り付けられた機械の薄い匂いがあった。 でも彼女はまるでずっと自分の一部だったと決めていたかのように腕を持っていた。
「若様」と彼女は言いました。 「遅うございます」
「お前が早いんだ」リンは言った。
「私は時間通りに来ました」と彼女は言いました。 「若様が予定を変えたのです」