マイキーがタケミチに求めたのは、一つだけだった。 バジを連れ戻すこと。
マイキーはそれを、天気の話をするように簡単に言った。 バジをヴァルハラから連れ出してトーマンに戻せば、キサキは消える。 失敗したら、タケミチは死ぬ。 三つ目の選択肢はなかった。 マイキーはそれを言う時に笑っていたので、余計に怖かった。
タケミチは翌朝、その重さを背負って学校へ歩いた。
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「顔色、最悪だぞ」とヤマギシが眼鏡を押し上げながら言った。
「ありがとう」
タケミチは席に落ちるように座った。 アッくんとマコトとタクヤはもうそこにいて、何かがあったと分かっているけれど先に言わせようとする、あの友達特有の顔でタケミチを見ていた。 タケミチは全部話した。 トーマンのこと、キサキのこと、バジのこと、日付はないのに既に過ぎてしまったような気がする締め切りのこと。
アッくんは背もたれに寄りかかった。 「つまり、マイキーにお前が殺されるってこと?」
「そう言ってた」
「トーマン一番隊の隊長を連れ戻さなきゃいけない」
「元隊長」
「俺たちが名前も知らなかった組織から」
タケミチは机に顔を伏せた。
ヤマギシが咳払いをした。 彼はずっとこの瞬間を待っていたので、席でしっかりと背筋を伸ばして、役に立つ人間の顔をした。
「ヴァルハラの話だろ」とヤマギシは言った。 「顔を上げろ。説明する」
タケミチは顔を上げた。
ヤマギシが説明してくれた。 トーマンは百人の組織だ。 五つの部隊、それぞれ二十人で、マイキーとドラケンが指揮している。 メビウスとの戦いでパーちんが逮捕されたので、副隊長のペーやんが三ツ谷の二番隊に移った。 三番隊の隊長の席には、メビウスの若い方を率いていた手塚国春が入ることになった。 メビウスはもともとバラバラな組織だった。 1988年生まれの連中は長内信孝について行き、1990年生まれの連中はキサキについて行って、二つの派閥はいつもお互いを邪魔していた。 マイキーがメビウスを壊した後、キサキは自分の仲間をトーマンに連れ込み、百人から百五十人に増やしてしまった。
「残ったメビウスはどこに行ったんだ?」とタクヤが聞いた。
「半間修二」とヤマギシは言った。 「反トーマンの連中が彼の下に集まった。合計三百人。自分たちをヴァルハラと呼んでいる」 ヤマギシは少し間を置いた。 「別名、首なし天使」
「首なし?」とマコトが言った。
「半間は代理の司令官にすぎない。 本当の命令を出しているのが誰なのか、誰も知らないんだ。 見える頭がいない」 ヤマギシはもう一度眼鏡を直した。 「反トーマンの派閥を実際に一つにまとめた人物、組織を作り上げた人物、それが三番の羽宮一虎だ」
その時、教室のドアが開いた。
入ってきたのは三年生の男で、首の横には龍の刺青が入っていた。 彼は教室を見渡して、タケミチを見つけると、顔いっぱいに気さくな笑顔を浮かべた。
「いたいた」と彼は言った。 「もう放課後だよな?」
マコトが立ち上がった。 彼は小柄ではないので、それを分かった上で立つような姿勢をした。 「お前、誰のつもりだ?」
ヤマギシがマコトの腕を掴んだ。
「やめろ」と小さな声で言った。 「その刺青だ。羽宮一虎だ」
マコトはまた座った。
一虎は教室を横切って、まるで長旅から戻った旧友に会ったかのようにタケミチの肩に腕を回した。 「信じられない」と彼は本当に嬉しそうに言った。 「俺より一個下で、同じ学校で、もうトーマンにいるのか。すごいな」 肩をぐっと掴んだ。 「行こう。見せたいものがあるんだ」
タケミチは友達を見た。 友達もタケミチを見た。 誰も、もっと良い考えを持っていなかった。
彼は行った。
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学校の入り口の廊下に出ると、二人の男が地面に足を変な方向に伸ばして座っていた。 あまり動けていなかった。 一虎は通りすがりに彼らをちらっと見た。
「俺が一番信頼している後輩だ」と彼は言った。
タケミチは歩くのを止めた。 「足、どうしたんですか?」
「折った」
「折った?」
「大丈夫だ」一虎は歩き続けた。 「行くぞ」
タケミチは続いた。 この道の先にバジがいるので、他の道はなかった。 でも、これから起こることは本当に危ないと、今ははっきり分かった。
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道を歩きながら、タケミチは一虎のことを思い出そうとした。 同じ学校の三年生なら、少なくとも名前くらいは聞いたことがあるはずだった。 「一年の一学期しかいなかったから」と一虎は、聞かれてもいないのに言った。 「その後は少年院にいた」まるで修学旅行の話をするように言った。 廃ゲーセンの外壁には、色の薄くなった首なし天使のスプレー画があった。 中に入ると、光がおかしかった。 暗くて、外より冷たく感じた。 空気もタケミチがトーマンにいた頃とは全然違った。 トーマンには外へ向かうエネルギーがあった。 ここを満たしているものは、内側へ向かっていた。 そしてバジが見えた。 芳川敬二は部屋の中心で誰かを殴っていた。 タスクをこなす人間の、集中した落ち着きで殴っていた。 殴られている相手は、バジが一番隊にいた頃の副隊長、トーマンで一番信頼していた仲間だった。 何かを証明するためにここに連れてきたのだ、とタケミチは後で知ることになった。 一虎が見ていた。 「信仰の試験だ」と彼は言った。 「組織を変えることは、宗教を変えることに似ている。証明しなければならない」 バジは止まった。 半間修二の方を見た。 「これで足りるか?」 近くにいたヴァルハラのメンバー数人が目を見合わせた。 一人がバジは思ったよりやりすぎたと言った。 バジは説教を聞きに来たんじゃないと言い返した。 半間はゆっくりとした、焦らない笑みを浮かべた。 一虎を呼んで、一虎が前に出て、タケミチを連れてきたと言った。 今のトーマンのメンバーで、一個下で、同じ学校だと。 タケミチは部屋の中の視線が自分に向いてくるのを感じた。 部屋の中にいる人数にも気づいた。 歓声が低く始まり、だんだん大きくなった。 メンバーたちがタケミチの血を求めて叫び、別の種類の試験を求めていた。 半間が手を上げると、騒ぎが静まった。 「バジはトーマンの創設メンバーだ」と半間は言った。 「彼が俺たちと一緒にいることは重要だ。でも、重要なことは疑いを引き寄せる」タケミチを見た。 「証人が必要だった。トーマンの最後の集会でバジが何を言ったか、確認できる人間が」少し首を傾けた。 「じゃあ、何を言った?」 タケミチの口が乾いた。 集会のことを思い出した。 バジが皆の前に立って、声に出してその言葉を言った場面を思い出した。 「ヴァルハラに入ると言いました」とタケミチは言った。 「トーマンは敵だと」 沈黙。 一虎はゆっくりと頷いた。 「トーマンの内側で何が起きているか、今まで話した誰よりも知っている」半間を見た。 「十分だ」 半間はバジに向き直った。 「まだ入りたいか?意味は分かっているな。俺たちは万次郎を殺すつもりだ」 バジはまっすぐに彼を見た。 「手伝う」 半間は両手を広げた。 「じゃあ、ようこそ」
部屋が落ち着くのを待ってから、タケミチはバジの方へ動いた。 これがその瞬間だった。 ここに来た理由、自分の仲間の足を折る男について街を歩いた理由、廃ビルに来た理由。 トーマンの創設メンバーが、元副隊長の血を拳につけてヴァルハラのアジトに立っている理由を知らなければならなかった。 「なぜですか?」とタケミチは聞いた。 「トーマンを作ったのに。なぜ裏切るんですか?」 バジは少しの間タケミチを見た。 それから言った。 「一虎も創設メンバーだ」 タケミチはその場で止まってしまった。 写真のことを思った。 六人の顔、五人までは名前を覚えた。 部屋の向こう側の一虎を見て、何かがカチッとはまるのを感じた。 六人目の顔。自分が分からなかった顔。 「一虎には恨みがある」とバジは言った。 「俺は、あいつの代わりにその恨みを忘れない」
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バジはそれを、劇的にではなく言った。 ただの事実として。 借りが本物であるように、義理も本物だった。 一虎に何があったにせよ、バジはそれを忘れないと決めていたのだ。
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こうして、その話が始まった。
2003年の夏。 中学一年生の頃。 芳川敬二は十二歳で、羽宮一虎も十二歳だった。 二人はいつもの集合場所へ一緒に向かっていたけれど、道にチンピラがいたので、二人は十二歳の組のメンバーとして最初に戦ってから、集合場所に遅れて着いた。
パーちんはもうそこにいて、興奮しきっていた。 トーマンのジャンパーが届いたのだ。 龍宮寺堅が皆を集めて、着るよう言った。 写真を撮りたかったから。 万次郎沙野はドラケンに聞かずにチョコパフェを最後まで食べてしまって、ドラケンはすぐ怒った。 二人が言い合いをしたのは、本当に仲が良いからこそ小さいことで怒れる、そういう喧嘩だった。
そして写真が撮られた。 新しいジャンパーを着た六人の少年。
そしてその後、バジは言った、誰も予想していなかったことが起きた。 誰も計画していなかった、誰も準備できていなかったことが。
でも、バジはまだそれを言わなかった。 廃ゲーセンの薄暗い光の中で、タケミチが見ている前で、そこで止まった。
その夏に何があったにせよ、一虎はトーマンの敵になり、少年院に送られ、それでも創設メンバーのままだった。 バジは自分が作った部隊を離れ、二人はこの部屋に来ることになってしまった。
タケミチはその真ん中に立って、自分がこの話の始まりに近いところにいないと理解した。 深いところにいた。 一番必要な部分は、まだこの先にあるのだ。