父には理解できなかった。 神を自分の中に取り込んだのに。 アメストリス中の魂を、こぶしの中の硬貨のように体の中に閉じ込めたのに。 それでもこの少年は、何度も何度も殴ってくるのだ。 錬成陣もなく、自動鎧もなく、腕から血を流しながら。
拳が顔に当たった。 父の頭が後ろに跳ねた。 膝をついて倒れそうになり、体の中のエネルギーが暴れるのを感じた。 逃げようとしている。 父はそれを押さえつけ、引き戻し、強引に静かにさせた。 立ち上がった。 こんな形で終わるわけにはいかない。 こんな少年に。
父はグリードに向かって飛びかかった。
腕をグリードの腹に突き刺し、リン・ヤオの体の中で燃えている賢者の石に指を巻きつけた。 引っ張った。 石が抜け始めた。
二人が共有する体の中で、リンはそれを感じた。 グリードをつかもうとした。 手はなかった、この場所には手がないのだから。 でも、魂が離すことを拒んだとき、魂は何かを使ってつかもうとするものだ。
「やめろ」とリンは言った。
「離せ」とグリードは言った。
「お前が必要なんだ。わかってるだろ。玉座が——」 「お前の玉座だろ」グリードの声はいつもと違った。 いつもより静かだった。 「ああ、そのことなんだが」
父の引っ張る力が強くなった。 リンは自分が引き寄せられていくのを感じた。 魂の端がほつれ始めていた。
「お前がまだ戦い続けたら」とグリードは言った。 「俺と一緒にあいつの中に引き込まれるぞ。 お前は父の中に閉じ込められてしまう。 それは玉座じゃない、王子様。 墓だ」
「構わない。離さない」
「ああ」とグリードは言った。 「お前が離さないのはわかってる」
それから彼はリンを突き飛ばした。 鋭く、はっきりとした力で、王子の意識は自分の体の中へと転がり落ちた。 そして父の引っ張る力がグリードをさらっていった。
「ランファン」とグリードは言った。 その声はリンの口から出てきた。 低く、はっきりした声で。 「こっちに来い」
彼女はもう動き始めていた。
「俺がお前についた唯一の嘘はそれだ」とグリードはリンに向かって言った。 二人の間にある、時と時の間の空間で。 「離してほしかった。お前は離さなかった」 少し間があった。 「お前は皇帝になる。ランファンはラースから取った石を持っている。それで十分だ」
父の腕は肘まで灰色になっていた。 グリードの石を握りしめ、炭素の鎧の能力が体に流れ込んでくるのを感じた。 体中に広がり、自分の本質を書き換えていく。 それでいい。 力は力だ。 子供たちが持つものはすべて奪えばいい——
ランファンの苦無が振り下ろされ、父の腕が地面に落ちた。
父は叫んだ。 後ろによろめき、切り株になった腕を押さえ、ランファンをじっと見た。 リンが倒れた。 手の甲のウロボロスが暗くなり、普通の皮膚のように滑らかになった。 リンは地面に横たわって息をしていた。 ただの王子に戻り、自分の体の中に自分だけがいた。
父の叫び声が変わった。 怒りとは少し違う何かに。 悲しみに近い何かに聞こえた。
そして灰色が広がり始めた。
「何をした」と父は言った。 疑問ではなかった。 自分の手を見下ろした。 ガラスに霜が広がるように、色が体を通り抜けていった。
「炭素の中で最も弱い形だ」とグリードの声がどこでもない場所から聞こえた。 「炭素がどれだけ多くの形を取るか知ってるか? ダイヤモンド。 黒鉛。 そしてこれだ。 古いチョークのようにもろい。 おめでとう」
父の体にひびが入った。 最初は小さなひびが、やがて大きなひびが、胸、腕、顔へと広がった。 四百年間、一度も感じたことのない脆さを感じた。 自分の中に手を伸ばし、グリードの魂を両手でつかみ、引き裂いた。
それは数歩先に落ちた。 一瞬だけ形を保っていた。 小さくて暗い何か、意見を持った影のような何か。 そして開いた空気の中でばらばらになり始め、少しずつ溶けていった。
グリードは消えながら周りの人たちを見た。 エドワード、血まみれの腕と間抜けな表情で、死んでもおかしくないものに自分を投げつける癖を持った少年。 リン、地面に倒れているが生きていて、ウロボロスの痕跡はもう残っていない。 王子がかつて言ったことを思い出した。 人と人の絆は魂の中に生きていて、切ることができないのだと。
グリードは最後の瞬間に決めた。 自分は十分すぎるほど積み上げた、と。
彼は手を離した。
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エドワードはもう走っていた。
父の体は動きながらひびが入っていた。 炭素が広がり、自分の重さで砕けていった。 エドワードは拳を引いて、男の腹に真っ直ぐ打ち込んだ。 腕は弱くなった体を乾いた粘土のように突き抜けた。
穴が開き、魂たちが出てきた。
何百という魂が。 何千という魂が。 四百年間閉じ込められていたクセルクセスの人々が、ついに解放された。 父の胸の穴から空へと昇っていった。 それぞれが一つの光の点になり、急がずに、音もなく上へと向かっていった。
父は震えた。 賢者の石はなくなってしまった。 もう自分をつなぎとめるものも、迫りくるものを押し返すものも残っていなかった。 黒い手が体の穴から伸びてきた。 何十本もの手が、扉の手が。 頭、腕、足を閉じ込めた。 父は叫んだ。 引き離そうとした。 でも手は引き返してきた。 その手はより強く、絶対的なものだけが持てる忍耐強さを持っていた。
父は自分の中に引き込まれた。 基礎を失った建物のように内側へと崩れていき、そして世界からいなくなった。
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父は自分自身の扉の前に立っていた。
また小さくなっていた。 フラスコの頃の姿、四百年前の姿。 子供ほどの大きさしかない、小さくて暗い影のような形。 扉は頭上にそびえ立ち、後ろには白く、闇の中に、真実が自分と同じ形で浮かんでいた。
「なぜだ」と父は言った。 「なぜ神は私を拒んだ」
「なぜなら」と真実は言った。 「お前は自分自身を信じなかったからだ」
父は振り向いた。 白い姿をじっと見た。 「私は完璧を求めた。 すべての知識を求めた。 その欲望の何がいけないというのだ」
「お前は人間から生まれた。 その命はお前のものだった。 その命とともに成長できたはずだ」 真実の声は穏やかだった。 残酷ではなかった。 算術が正確であるように、ただ正確だった。 「その代わり、お前は他者のものを盗んだ。 お前は進化しなかった。 概念を追いかけ、それを目標と呼んだ。 その間ずっと、お前は何にもならなかった。 ただ積み上げただけだ」
「私は完全な存在になりたかった」と父は言った。 四百年の計画と軍と国を持っていた頃には決してなかったほど、声がひびわれ、細く、必死になっていた。 「すべての知識、すべての理解が欲しかった。 それの何がいけないのか。 お前の名前を教えろ。 こんな風に私に話すのは誰だ」
「私はずっとそうであったものだ」と真実は言った。 「私は世界だ。 宇宙だ。 神だ。 真実だ。 一つだ。 すべてだ。 私はまたお前でもある」 少し間があった。 「そして私は、傲慢になりすぎた者に正しい絶望を与える存在だ。 自分と周りのすべてを壊してしまわないように。 お前の絶望の番が来た」
扉が開いた。 黒い手が出てきた。
「嫌だ」と父は言った。 後ずさりした。 「嫌だ、あの中には戻らない。 あの場所がどんな場所か、お前にはわからない。 閉じ込められた、静寂の中に。 あそこにいたことがある、耐えられなかった。 私はどうすればよかったのか教えてくれ。 教えてくれ。 答えは何だったのだ」
真実はしばらく父を見た。
「自分の目で見ればよかったのだ」
扉が父を飲み込んだ。 叫び声が上がり、そして途切れ、扉が閉まった。 その後の静寂は完全だった。
全員がアルの鎧に向かって動いた。
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鎧は兜を上に向けて地面に空っぽで立っていた。 目の奥の光が消えていた。 リンはエドワードの元へやってきた。 腹の傷を片手で押さえながら、ラースのポケットからランファンが取った賢者の石を差し出した。
「使え」とリンは言った。 「アルを連れ戻せ」
エドワードは石を見た。 長い間、じっと見た。
「僕たちは約束したんだ」と彼は言った。 「アルと僕で。他の人の命を使わずにやり遂げると約束したんだ」
「エド——」
「わかってる」彼は鎧のそばの地面に座り込んだ。 頭を両手に埋めた。 考えた。
ホーエンハイムがゆっくり歩いてきて、隣に立った。 数時間前よりもずっと年老いて見えた。 もとからずっと老けて見えていたのに。
「私がやろう」と彼は言った。 「私の賢者の石はほぼ使い果たしてしまった。 あまり残っていない。 でもアルフォンスを連れ戻すには十分かもしれない。 やらせてくれ」
エドワードは父を見上げた。
「嫌だ」と彼は言った。
「エドワード——」
「嫌だ。一つの命と別の命を交換する。それは——そんなことはしない。あなたとアルを交換なんてしない。しない」立ち上がると、その顔は疲れていて、若く、飾り気がなかった。 「ありがとうございます。本当に。でも嫌です」
ホーエンハイムは黙った。 一度うなずいた。
エドワードはしばらく立っていた。 それから顔の表情が変わった。 空の鎧に目が向き、自分の手に向き、周りの人たちに向いた。 ホーエンハイム、リン、ランファン、メイ、生き残った兵士たち、全員が待っていた。
彼は史上最年少の国家錬金術師だった。 真実を見たことがある。 錬成陣なしで錬成できる。 グラトニーの体の中に入り、記憶から人体錬成陣を描いて外に出たこともある。
すべてのピースが揃っていた。 どうつなぎ合わせるかが見えた。
「メイ」と彼は言った。 「アルの鎧から離れてくれ。もっと遠く。みんな、場所を空けてくれ」
地面から枝を拾い、ひざまずき、描き始めた。
陣は大きく正確だった。 線は手に馴染んでいた。 以前にも描いたことがあるからだ。 光もなく、出口もない場所で、扉を作る必要があって、自分だけを使って作ったとき。 アルの鎧の周りに描いた。 時間をかけて、すべての細部を正確に描いた。
描き終えると、陣の中心に立った。
全員を見回した。
「すぐ戻る」と彼は言った。 少し笑いそうになった。 「これが最後の錬成になるから、よく見ておいてくれ」
両手を合わせ、地面に押しつけた。
ホーエンハイムは光が息子を包むのを見て、微笑んだ。
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白い空間はいつも通りだった。 エドワードは自分の扉の前に立っていた。
真実がそこにいた。 父の真実より小さく、エドワードを映しているから子供の形をしていた。 白く空洞の目でエドワードを見て、待っていた。
「弟と引き換えに何を差し出すか」と真実は言った。
「僕の扉だ」とエドワードは言った。
少し間があった。
「お前の扉だ」と真実は言った。 「それを失えば、錬金術をすべて失う。一日も修行したことのない普通の人間になってしまう」
「わかってる」
「それは莫大な代価だ」
「それでいい」とエドワードは言った。 「アルはそれだけの価値がある」自分の扉を見た。 十歳のとき、人生最大の間違いを犯した後に初めてくぐった扉を。 「それに——ずっと錬金術が何にでも答えを出せると思ってたのが問題だったと思う。 初めてあの扉をくぐったとき、十分に学べれば、正しいものを錬成できれば、壊れたものを何でも直せると決めつけた」 首を振った。 「それは傲慢だった。扉は必要ない。仲間がいる。それは大したことだ」
真実はしばらく黙っていた。 それから笑い始め、エドワードの声がその笑い声に混じり込んだ。 その笑いは馬鹿にしたものではなかった。 もっとまれなものだった。 正しい答えが出たときの音だった。
「お前の勝ちだ」と真実は言った。 「お前は私に勝った。欲しいものを何でも持っていけ」
エドワードは自分の扉に向かい、解体し始めた。
扉は手の中で溶けていった。 それが消えていくにつれ、真実も消え始めた。 でも完全に消えてしまう前に、真実が指を差した。 白い空間を横切って、別の扉を。 もっと小さな扉を。 その前に、少年が地面に座っていた。
アルフォンスが顔を上げた。
彼は完全だった。 自分の顔、自分の体、自分の目。 以前の目、エドワードがほとんど覚えていない目。 子供だったあの頃以来、こんな形で見たことがなかった目。
エドワードは歩み寄り、手を差し出した。
「よう」と彼は言った。
アルフォンスは手を取って立ち上がり、二人は残った扉を一緒にくぐった。
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アルフォンスは目を開けた。
光だった。 本物の光だった。 まばたきすると、周りの形がはっきりしてきた。 最初に兄の顔が見えて、次に父の顔が見えて、それから他の全員が見えた。 みんなが近くに集まっていた。 誰かが笑い、誰かが泣いていた。 その二つが混ざり合っていて、それが完全に理にかなっていた。
温かさを感じることができた。 外からではなく、内側から来る温かさがどんなものか、忘れていた。 地面の感触があった。 肌に当たる空気の感触があった。 自分の心臓の鼓動があった。 すべてが一度に押し寄せてきて、ほとんど多すぎるくらいだった。
ホーエンハイムがそばにひざまずき、アルフォンスは父の手を取って握りしめた。
メイが彼の肩に飛びついて、大声で泣きながら肩に顔を埋めた。 アルフォンスは抱きしめ、温かさが圧倒的で本物のまま続くのに任せた。
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太陽がセントラルシティの上に沈んでいった。
エドワードは静かな通りを歩いた。 脇の下に小さな体を抱えていた。 プライドだった。 今は子供に戻り、セリム・ブラッドレーが父に何年もかけて別の何かに作り上げられる前の姿に戻っていた。 少年は虚ろな目でまっすぐ前を見ていた。 その目はまだ、子供の目にあるべきでないほど老いていた。
ブラッドレー夫人がドアを開けた。
小さな少年を見た。 エドワードを見た。 その顔が素早くいくつかの表情を通り過ぎた。
「セリムという名前です」とエドワードは言った。 「彼は——説明が難しいんですが。居場所が必要だと思います」
エドワードは彼女のもとにその子供を残して立ち去った。 息子であって息子でなかった、そして今は違う何かになった子供を。
街のどこかで、ラジオ放送の準備が進んでいた。 混乱した市民に、この日のことを説明する放送だった。 セントラル司令部による錬金術の実験、国を人質にした事件、マスタング大佐とアームストロング将軍の共同部隊がそれを終わらせたと説明するはずだった。 クレミン将軍とエジソン将軍はすでに拘束され、階級を剥奪されていた。 放送では、総統キング・ブラッドレーと息子セリムが戦闘で死亡したと伝えることになっていた。
ほぼ正しい話だった。
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ホーエンハイムは、父が地の底に引き込まれた場所に立って、長い間地面を見ていた。
アームストロング少佐がそこで彼を見つけた。 大きな男は泣いていたが、それを隠そうとする様子は全くなかった。
「あなたの息子たちが全員を救いました」とアームストロングは言った。 「この国の全ての人が生きているのは、彼らのおかげです」
ホーエンハイムは彼を見た。 四百年のことを考えた。 クセルクセスのことを、フラスコのことを、そこからここまで導いてきたすべての選択を考えた。 その一つ一つが、理解するまでに長い時間がかかった何かの鎖の一つだった。
「教えてくれてありがとう」と彼は言った。
最後の光が消えていく中、彼はセントラルを去った。
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リゼンブールの墓地は静かだった。
ホーエンハイムはトリシャの墓の前にひざまずいた。 何時間も歩き続けていて、体は急速に弱っていた。 石はほぼ使い果たされてしまい、古い機械仕掛けは続ける理由を失いつつあった。 それを感じることができた。
「たくさんの間違いをした」と彼は墓に向かって言った。 「ほとんどはあなたと出会う前のことだ。でもあなたと息子たち——それが価値のあるものにしてくれた。四百年のすべてを。耐えられないほど長い時間を」静かに自分に向かって笑った。「終わろうとしている今、少し惜しい気がするのは不思議なことだ。十分長く待ったのに」
彼は石にもたれかかった。 体はひびが入るのをやめて、もっと静かな何かを始めていた。
彼は微笑んだまま動かなくなった。
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ピナコは夜明けにトリシャへの花を持って墓地にやってきた。 何百回も歩いた道を、石の間を抜けながら進んだ。 角を曲がって止まった。
ヴァン・ホーエンハイムが妻の墓にもたれかかって座っていた。 目は閉じており、表情は穏やかで、長い年月の中でこれほど安らかな彼を見たことがなかった。
ピナコはしばらくそこに立っていた。 それから微笑んだ。 悲しい笑みだったが、本物の笑みだった。 そして古い友人をそのままにしておいた。