マイキーが呼んだので、みんなが集まった。
何十人ものメンバーが通りに並んだ。 ジャケットを着て、静かに立って、寒い空気の中で息が白くなっていた。 タケミチはその中に立って、一つの言葉を待っている大勢の人たちの重さを感じていました。
ドラケンが前に出た。 「三番隊の新しい隊長を決める」と言った。 「出てこい」
タケミチの心臓が跳ねた。 一瞬、もしかしてマイキーが自分を見ているのかもしれないと思ってしまった。
でも、違った。
人混みの中から一人の男が動いた。 タケミチの肩をかすめながら、一度も見ずに通り過ぎた。 細身で、顔立ちが鋭くて、静かな様子が自信とも軽蔑とも取れるような男だった。 タケミチはその名前を知らなかったけれど、どこかで見た顔だと感じていました。 どこだったか、思い出せなかったのです。
男は前に歩いて行って、マイキーに背を向けて座った。
空気が変わった。 周りの人たちが固まるのが分かった。
男の仲間の一人が声を上げた。 「三番隊の新しい隊長、キサキ・テッタだ」
その名前は、水に落とした石のように響いた。
キサキ。タケミチはその名前を聞いて、これまでに言われたことが全部頭の中でぶつかった。 直人の声。日向が死んでしまう未来。みんなが同じ名前を指さしていた。同じ男。全てが終わる始まり。
その男が今、東卍を作ったマイキーに背を向けて、もうここは自分のものだというように座っていた。
「あいつはメビウスにいたんじゃないか」群衆のどこかから声がした。 他の人たちもそれに続いた。 「俺たちの仲間じゃない」「なんであんな座り方してるんだ」「自分が何様だと思ってるんだ」
ドラケンの声が通った。 「うるさい」
静かになった。
マイキーが話した。 その声は穏やかだったけれど、絶対的だった。 「東卍はもっと大きくならないといけない。ヴァルハラと戦うためには、このままじゃいられない」少し間を置いた。 「キサキ・テッタを三番隊の新しい隊長にする」
タケミチの手が震えていた。
これが何を意味するか、分かっていました。 次に何が起きるか、細かいことは分からなくても、その形は分かっていたのです。 東卍が内側から腐っていく未来。日向が死んでしまう未来。それがここから始まる。この通りで、この決断で。周りにいる全員がマイキーの言葉を受け入れようとしていた。
タケミチは考えるのをやめて、拳を振った。
拳がキサキの顔の横に当たった。 夜の空気の中で、その音は短くて小さかった。
それから、全てが爆発した。
「何やってんだ」ドラケンの声は怒りと驚きで荒かった。 「お前は東卍じゃないだろ!こんなことに口を出すな!」
隊長たちがタケミチに向かった。 タケミチはその場に立って、何か言えることを探した。 これを説明できる言葉を見つけようとした。 でも、見つけられなかった。
そのとき、横から誰かが向かってきた。
でも、その拳は届かなかった。 三ツ谷が途中でその腕を掴んで、タケミチが見上げると、背が高くて肩幅の広い男が三ツ谷の手から逃れようとしていた。 目を大きく開けて、まるで今週一番いいことが起きたみたいに笑っていた。
マイキーの声が平らになった。 「バジ。お前はここにいるはずじゃないだろ」
一番隊隊長、創設メンバー、東卍を作った五人のうちの一人、バジ・ケイスケは三ツ谷を振り払ってジャケットを直した。 顎でタケミチを示した。 「俺が知らない奴を一発殴ったら、みんながこんなに怒るのか。それじゃあ、ついに俺を追い出すのか?」
少し間を置いた。
「いいよ」と彼は言った。 「じゃあ、俺は辞める。一番隊隊長、終わり。ヴァルハラに入る」
その言葉は完全な沈黙の中に落ちた。
キサキの声がタケミチの後ろから聞こえた。 静かで、ほとんど丁寧なくらいだった。 「面白いタイミングだな」タケミチをちらりと見た。 「顔か、腹か?」
タケミチは目をしばたたいた。 「何?」
「俺は顔の方が好きだ。でも、お前が選べばいい」
「腹」とタケミチは言った。 最初に出てきた言葉だったので、身構えた。
キサキは顔を殴った。
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気がついたとき、タケミチは冷たい地面の上にいた。 マイキーがそばにしゃがんでいた。
「本当にあいつが嫌いなんだな」マイキーは言いました。
タケミチは体を起こして顔を触った。 指に血がついた。 「ああ」と言った。「嫌いだ」
マイキーはしばらく黙っていました。 「何かを作るのは難しいんだ。新しい人を連れてきたら、古い人が去っていく」 苦しそうには聞こえなかった。 ただ、いつも見せる気楽な笑顔には合わない疲れ方をしていた。 「毎回そうなる」
それから、タケミチをまっすぐ見た。 「頼みがある」
マイキーは昔の近所に住んでいた子のことを話し始めました。 いつも喧嘩を仕掛けてきた子で、マイキーは毎回勝ったけれど、その子はやめなかった。 東卍の創設メンバー。 中学一年のとき、五人で一緒だった。 マイキー、ドラケン、三ツ谷、パーちん、そしてその子。
バジ・ケイスケ。
「ヴァルハラからあいつを連れ戻してくれ」マイキーは言いました。 「俺は本当にあいつが好きなんだ」
タケミチはマイキーを見た。 それから言った。「お返しに、俺もお願いがある」
マイキーは待った。
「キサキを東卍から追い出してくれ」
マイキーの表情は変わらなかった。
「説明はできない」タケミチは言いました。 「証拠もない。でも、あいつはお前が作っているものを全部壊してしまう。東卍をダメにする。俺には分かる」
長い沈黙があった。
「あいつが危険だとは分かってる」マイキーはついに言いました。 「でも、あいつが持ってくるものが必要なんだ」 タケミチの目を見た。 「ヴァルハラと戦う前にケイスケを連れ戻せ。キサキより、お前の方が役に立つということを証明してみせろ」 少し間を置いた。 「もし失敗したら、お前を殺す」
マイキーは他のことを話すときと同じように、簡単に、特別なことでもないように言った。
タケミチは完全に信じた。
「おい」マイキーは振り返らずに声を上げました。 「三ツ谷。そこにいるのは分かってるぞ」
少し間があった。 それから三ツ谷が角から出てきた。 表情は何も変わっていなかった。
マイキーはほとんど笑うような顔になりました。 「タケミチを二番隊に入れる。お前の下だ」 タケミチを見た。「今から東卍のメンバーだ」
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他のみんなは去って行った。 タケミチは壁の近くにある蛇口で顔の血を洗うために残っていました。 水がきれいになったので、タケミチはそのまま少しの間立って、自分の人生がどれだけ変になってしまったかを感じました。 直人に、東卍のトップになると真剣に言ったことを思い出したら、地面に消えてしまいたくなりました。 あのときは東卍のメンバーですらなかったのに、五分前まで。
バジがなぜ去ったのか、まだ分からなかった。
地面に何かが目に入った。 小さなお守りと、その横に携帯電話があった。 拾ってみた。 画面には写真が映っていた。 五人の中学生が肩を並べて、写真を撮られているとは知らないときのような笑い方をしていた。
東卍の創設メンバーたち。
タケミチは数えた。マイキー。ドラケン。三ツ谷。パーちん。バジ。
五人。
もう一度見た。 写真には六人目がいた。 その顔をじっと見たけれど、分からなかった。 全く見覚えがなかった。
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街の反対側で、バジは一人で歩いていた。 でも、すぐに一人ではなくなった。
前に出てきた人物は、あの写真の六人目だった。 最初から物語の中にいるはずだったのに、タケミチは一度も名前を聞いたことがなく、道ですれ違っても分からなかったかもしれない人物だった。
羽宮一虎。
バジは歩くのを止めた。 二人は顔を見合わせた。
二人の間で何かが通り過ぎた。 それはずっと前に決まっていたことだった。