患者の肝臓を切り取る手術はとても危険である。残った肝臓がうまく大きくならないと、患者は命を失う危険がある。これまで、この問題を解決する薬はなかった。
長い間、科学者たちは「プラスミノゲン」という血液を固まりにくくするタンパク質が、肝臓の再生に絶対に必要だと信じていた。しかし、ミシガン州立大学の研究チームがマウスを使って実験したところ、予想とは反対の結果が出た。プラスミノゲンを減らしたマウスの方が、肝臓の細胞が早く増えて、手術後の回復が良かったのである。
この発見に注目したメイヨークリニックの外科医、パトリック・スターリンガー氏は、多くの病院と協力して臨床試験を行った。彼らは、出血を止めるために広く使われている「トラネキサム酸」という薬を使った。この薬はプラスミノゲンの働きを抑える効果がある。
手術を受ける患者にこの薬を使ったところ、肝臓の機能が低下する危険が約3分の1に減った。特に、もともと肝臓の働きが弱かった患者に高い効果が見られた。これまでの常識を疑うことで、患者の命を救う新しい治療法が見つかったのである。