チリの山の上にある巨大な望遠鏡が夜空を向いている。この望遠鏡には、アメリカのSLAC国立加速器研究所が開発した特別なカメラが取り付けられている。この施設は3日ごとに膨大なデータを集めるが、人間だけでそのすべてを分析することはできない。そこで、自分で考えることができる機械が必要になる。
アメリカエネルギー省は、科学の進歩を早めるために人工知能(AI)を活用する「ジェネシス計画」を開始した。この計画の目標は、これからの10年間でアメリカの科学技術の研究効率を2倍にすることだ。政府は17の国立研究所、大学、そして民間企業をつなぐ巨大なネットワークを作っている。GoogleやMicrosoft、OpenAIなどの大企業もこの計画に参加している。
このプロジェクトの中心となるのは「アメリカン・サイエンス・クラウド」というシステムだ。世界で最も強力なコンピューターと最先端の研究設備をつなぎ、膨大なデータを処理する。例えば、チリの望遠鏡で宇宙の爆発現象を見つけたとき、わずか2分で世界中に知らせるシステムが作られている。
また、カリフォルニアの研究所では、粒子加速器にAIを直接組み込む研究が進められている。バークレー研究所のリーダーであるジャン=リュック・ヴェイ氏は、「常に学習するAIツールを作ることで、物理学やエネルギー、医療技術などの分野で、新しい発見をスピードアップさせることができる」と説明する。さらに、人間がいなくても自分で実験を行う「自動化された研究所」の開発も進んでいる。
エネルギー省はこのプロジェクトに2億9300万ドル(約440億円)の資金を提供することを発表した。科学の歴史において、これまでは別々の研究所で働くチームがそれぞれ発見を行ってきた。しかし、ジェネシス計画はすべてを一つの賢いネットワークでつなごうとしている。次の素晴らしい発見は、人間の頭脳からではなく、学び続ける機械から生まれるかもしれない。