メスカルのボトルの底に浮かぶ白っぽくしわしわの虫。その正体は約80年間、謎のままだった。
フロリダ博物館のキュレーターである川原明人が率いる研究チームは、市販のメスカル21本を購入し、さらに2022年にメスカル生産の中心地であるオアハカ州を訪れ、蒸留所から直接ボトルを入手した。そして虫を取り出し、DNAを解析した。
その結果は驚くほど明確だった。分析できたすべての標本が同一の種、アガベアカムシガのComadia redtenbacheriに属していることが判明した。この研究はオープンアクセス誌「PeerJ」に掲載された。
また、ボトルによっては赤みがかった虫ではなく、白っぽい「白いワーム」が入っていることがある。これは別の生き物ではなく、同じアカムシがアルコールに長期間漬かることで色素が失われたものだと判明した。
しかし、この発見には深刻な問題も伴う。メスカル市場は急成長しており、2030年までに約21億ドルに達すると予測されている。ボトルが増えれば虫も増えるが、虫は工場では作れない。幼虫を採取するには宿主のアガベを切り開く必要があり、それがしばしばその植物を枯らしてしまう。研究によると、採取によって野生のアガベ個体数が最大57%減少する可能性があるという。
約1世紀にわたって謎だったボトルの中の虫は、今や名前と種と問題を持つ存在になった。